ミズイロと学ぶ!胚はどう守られている? 培養室の「ダブルチェック」とは

ミズイロと学ぶ!胚はどう守られている? 培養室の「ダブルチェック」とは


体外受精では、採卵した卵子、精子、受精卵(胚)を胚培養士が大切にお預かりします。

治療を受けられている方は培養室に入ることはないため、「どのように管理されているの?」「取り違えは起こらないの?」と疑問や不安を感じるかもしれません。

そこで今回は、培養室で安全性を高めるために行われている「ダブルチェック」についてご紹介します。

ダブルチェックって何?

ダブルチェックとは、その名の通り2人以上で確認を行うことです。

卵子や精子、胚を扱う際には、患者様のお名前やID、用いるディッシュ(卵子や胚を安全に保管するためのフタ付きの容器)やチューブ(精子などを扱う試験管)などを照らし合わせながら確認を行います。

さらに胚培養士によるダブルチェックに加え、バーコード認証システムも活用しています。患者さまのIDと、卵子や精子、胚を管理するディッシュやチューブなどの情報を電子的に照合することで、人による確認とバーコード認証、それぞれの強みを生かしながら確認を重ねています。

「ちゃんと確認したつもり」ではなく、「複数人で確認した」という事実を積み重ねることが、安全につながります。

どんな場面で確認するの?

ダブルチェックは、特別な場面だけで行われるものではありません。

採卵した卵子を操作するとき、精子を調整するとき、受精を行うとき、胚を凍結するとき、そして胚移植に至るまですべての作業工程ごとに確認を行います。

また、クリーンベンチ(清潔な環境下で検体を操作するための装置)内では1人の患者様の検体のみ取り扱います。複数人の検体を同時には操作しません。容器やラベルの取り違えは決して起こしてはならない重要なリスクになります。

患者さまの大切な卵子・精子や胚を扱うからこそ、「これくらい大丈夫」と考えることは絶対にありません。私たち胚培養士は、「お預かりしている胚」を「きちんとお返しする日」まで、必ず2人以上で確認を行うことを基本としています。

引用元:漫画「胚培養士ミズイロ」おかざき真里 小学館 週刊スピリッツ連載 単行本第10巻第56話より

なぜ2人で確認するの?

胚培養士は専門的な知識と技術を身につけた医療スタッフですが、人である以上、思い込みや見落とし(ヒューマンエラー)が絶対に起こらないとは言い切れません。

たとえば、患者さまの情報を一瞬見間違えてしまうことや、連続した作業の中で確認が甘くなってしまうことは、どれだけ経験を積んでも起こり得ます。

そのため、培養室では「人はミスをする可能性がある」という前提で、安全に検体を扱う仕組みを作っています。

1人で確認して終わりではなく、もう1人が確認することで、小さな見落としも防ぐことができます。

これは、技術が足りない人を確認するためではなく、また高い技術を持っているから大丈夫という話でもなく、行っていることを複数の目で確認することで安全性をさらに高めるための仕組みです。

培養室では、患者さまから見えないところで、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねています。ダブルチェックも、その大切な取り組みの一つです。

次回は、このダブルチェックを支えている胚培養士の教育やトレーニングについてご紹介します。

ミズイロと学ぶ
安全な培養室を支える、胚培養士の技術とチームワーク

ダブルチェックは、患者さまの卵子・精子や胚を取り違えないため、また培養室の安全を守る大切な仕組みです。

しかし、その仕組みが十分に機能するためには、高い技術を持った胚培養士と、日々の積み重ねが欠かせません。

今回は、培養室を支える「人」の取り組みをご紹介します。

胚培養士はすぐに一人前になれるわけではありません

胚培養士は、採用されたその日から顕微授精や胚の操作を担当するわけではありません。
まずは培養液の準備などの基本的な業務から始め、精子調整、検卵(採卵時に採取した卵胞液から卵子を探す)、培養液の交換など少しずつ段階を踏み、経験を積みながら、一つひとつの技術を身につけていきます。
c-IVF(ふりかけ法による受精)や胚の凍結、融解、そして顕微授精といった一連を担当できるようになるまでに、先輩のもとで指導を受けながら、段階的にスキルを広げていきます。
また一通りできるようになったからといって終わりではなく、経験を重ねながら、自分の技術を見直し、常にスキルアップしていくよう努めています。


「誰が担当しても同じ」を目指して

オーク会には、オーク住吉産婦人科、オーク梅田レディースクリニック、オーク銀座レディースクリニックの3 つのクリニックにそれぞれ培養室があります。クリニックによって、または担当する人によって大きくやり方が変わったり、成績に影響することは望ましくありません。

オーク会では、培養士を育成するマニュアルがあり、これに沿って繰り返しトレーニングを行い、誰が担当しても同じレベルで、安全に業務ができることを目指しています。

もちろん、一人ひとり得意・不得意はあります。それでも、知識を得て技術を習得し、経験を積み、さらに技術を磨き続けることで、安定した品質を保てるよう努力しています。

一人ではなく、チームで支えています

培養室の仕事は、一人だけで完結するものではありません。

作業の確認だけでなく、困ったことがあれば相談し、情報を共有し、チームで話し合いながら改善を重ねています。

培養士は、それぞれが役割を担いながら、お互いに支え合っています。そこには、経験豊富なスタッフもいれば、新人培養士もいます。

患者さまが目にすることは少ない培養室ですが、その中では、命の始まりを大切にしながら、安全性と技術の向上に日々取り組んでいます。

赤ちゃんを授かりたいと願うカップルが、安心して治療に臨んでいただけるように──。

ダブルチェックという仕組みと、それを支える胚培養士一人ひとりの技術やチームワークが、おふたりの大切な卵子・精子や胚をお預かりしています。

採卵できた卵子が1個。そのとき、受精方法をどう選択する?(後編)について詳しくはこちら>>

次回へ続く

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