現在デンバーで開催されているアメリカ生殖医学会(ASRM)に参加しており、最も注目されている話題の一つが、PGT-A(着床前遺伝学的検査)の結果が曖昧な場合に、再度胚を融解して生検するべきかどうかという議論です。
PGT-Aは胚の遺伝的異常を検出するために行われる検査ですが、モザイク胚や部分的なトリソミー、部分的なモノソミーが検出された場合、あるいは「No result」(結果が得られなかった場合)など、結果が不確定なケースも存在します。最近の研究や臨床データにより、再度生検(re-biopsy)を行うと、異なる結果が得られることが少なくないことが明らかになってきました。
特に「No result」の場合、再度の生検によって60%の確率でeuploid(染色体異常がない正常な胚)という結果が得られることがわかっています。さらに、部分異数性(部分的な染色体異常)の場合でも、正常胚として妊娠や出産に結びつくケースが多いことが報告されています(具体的な数字は論文に記載されています※)。このように、曖昧な結果が出た場合でも、正常な胚を見逃さないために再生検が有効な場合があります。
ただし、再度生検を行うことによる影響も示唆されています。再生検を実施した場合、妊娠判定の際のβHCGの値がかなり低くなることが報告されており、これは着床率にも影響を与える可能性があると考えられています。このため、再生検を行うかどうかは、メリットとリスクを慎重に天秤にかけて判断する必要があります。
このテーマは、生殖医療の分野において非常にホットな話題であり、胚移植の成功率向上や妊娠の安全性確保に寄与する可能性があります。医療法人オーク会としても、この分野の進展を注視し、患者様にとって最適な治療法を提供するために最新の情報を取り入れていくことが重要です。
今後も、このような新しい知見を踏まえた議論が進んでいくことが期待されます。
【参照】※部分異数性の妊娠に関する具体的なデータや論文については、下記になります。
J Assist Reprod Genet
・2022 Jun;39(6):1313-1322. doi: 10.1007/s10815-022-02487-z. Epub 2022 Apr 23.
Clinical re-biopsy of segmental gains-the primary source of preimplantation genetic testing false positives
Steve Grkovic 1, Maria V Traversa 2, Mark Livingstone 2, Steven J McArthur 2
https://link.springer.com/article/10.1007/s10815-022-02487-z
・2023 Aug;40(8):1905-1913. doi: 10.1007/s10815-023-02875-z. Epub 2023 Jul 11.
Should embryo rebiopsy be considered a regular strategy to increase the number of embryos available for transfer?
Mar Nohales 1, Aila Coello 2, Angel Martin 3, Fernanda Insua 2, Marcos Meseguer 2, María José de Los Santos
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10371936/
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