Oak Journal Review:オキシトシン拮抗薬による妊娠率の向上

Oak Journal Review:オキシトシン拮抗薬による妊娠率の向上

こんにちは。検査部の鈴木です。
4月11日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私がOak Journal Reviewで紹介した次の論文の内容をまとめた動画を公開いたしました。

Is oxytocin receptor antagonist administration around embryo transfer associated with IVF treatment success? A systematic review and meta-analysis.
Neumann K, Griesinger G.
Reprod Biomed Online 2021;43(6):983-94.

オキシトシン(oxytocin)は、脳下垂体で作られるホルモンの一種です。このホルモンは、子供や飼い犬等とのスキンシップでリラックスした時に分泌されることから、愛情ホルモンと呼ばれることもあります。また、子宮の収縮を促す働きがあり、陣痛の誘発(促進)にも使われています。

今回紹介した論文では、オキシトシンの働きを妨げる薬剤、オキシトシン拮抗薬を使用した研究です(注1)。オキシトシン拮抗薬は、オキシトシンとは逆の作用があり、子宮の収縮を抑え早期流産の防止に使用されています。
オキシトシン拮抗薬を移植時に投与する効果の研究が、これまでに複数行われています。それらの結果は、全体的に移植成績を向上させる可能性を示唆しています。しかし結果にはばらつきがあり、偶然良い結果を示している可能性もまだ否定できません。

そこで、今回紹介した論文では、複数の研究の結果を統合して解析するメタ解析を用いて、より信頼性の高いオキシトシン拮抗薬の胚移植成績への効果を調べています。
メタ解析によってオキシトシン拮抗薬の投与により移植成績が向上することを示せるのでしょうか。それとも有効性が消えてしまうのでしょうか。詳しい内容は、こちらの動画でご確認ください。


(注1)薬剤など化合物が細胞に何らかの働きをするためには、その化合物が細胞膜や細胞内の特定のターゲットに結合する必要があります。拮抗薬は、本来の化合物よりもターゲットへの結合能が高く優先的に結合してしまいます。その結果、本来の化合物がターゲットに結合できず、機能を発揮できなくなります。