Oak Journal Review:卵子凍結の最終的(と考えられる)使用率と生児獲得率

Oak Journal Review:卵子凍結の最終的(と考えられる)使用率と生児獲得率

こんにちは。検査部の鈴木です。
9月13日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私がOak Journal Reviewで紹介した論文の内容を短くまとめた動画を公開いたしました。
紹介した論文は、卵子凍結により保存されていた卵子の(ほぼ)終着点での使用率とお子さんを迎えることができた方の割合(生児獲得率)を調べた

Planned oocyte cryopreservation-10-15-year follow-up: return rates and cycle outcomes.
Blakemore JK, Grifo JA, DeVore SM, Hodes-Wertz B, Berkeley AS.
Fertil Steril 2021;115(6):1511–20.
です。

調査対象となった患者様は、ニューヨークのマンハッタンにある医療施設の患者様です。都市中心部の医療施設に通う患者様ということで、患者背景は当院の患者様と共通する部分が多いのではないかと想像します。そのため、国の違いによる差異はあるものの、この論文の結果はすでに卵子凍結をされている多くの患者様や、これから卵子凍結を考えている方の参考になるかと思います。
体外受精により最初のお子様(注1)が誕生したのが1978年ですが、そのあとすぐ1986年には凍結卵子による妊娠が発表されています(注2)。このように卵子凍結の歴史は体外受精(IVF)に劣らず長いのですが、結果についてはまだ十分な蓄積がありません。その理由は、卵子凍結の英語表記としてoocyte cryopreservation(卵子凍結保存)が使われるように、長期間保存されるためです。

体外受精では、凍結融解胚移植でも比較的短期間の内に子宮に胚を戻します。そのため卵子凍結と比較するとどんどん結果が蓄積されていきます。しかし卵子凍結は、結果がわかるのは何年も先に融解して初めて結果が得られます。今回の論文でも、凍結卵子を融解して使用したのは凍結開始から平均6年後でした。
卵子凍結では、このように凍結保存されている期間が長いため、凍結の開始から十分な時間を経た結果でなければ、最終的な結果が得られません。経過年数が短いうちに調べると、最終的な真の利用率よりも低く見積もってしまう可能性があります。その結果、実際よりも使われないという印象を与えてしまう恐れがあります。
そこで今回紹介する論文の筆者らは、卵子凍結開始後10から15年経てば、30代前半で卵子凍結された方も40歳を超えるので、凍結卵子を使った最終的な成績が出そろっているだろうと考えました。

卵子凍結をした卵子を、最終的にはどのくらいの割合の方が融解して使用したのでしょうか? また、長期間凍結しておいた卵子を使用し、ちゃんとお子様を迎えることができたのでしょうか? どの位の卵子を凍結しておいたのでしょうか?
詳しくはこちらの解説動画をご覧ください。

参照:
1. 体外受精により最初に誕生された方は、ルイーズ・ブラウンさん。2018年に来日された際の会見のニュースをYouTubeで見ることができます。

2. Chen C. Pregnancy after human oocyte cryopreservation. Lancet 1986;1(8486):884–6.