Oak Journal Review:精子DNAおよびクロマチン完全性と男性の年齢との関連

Oak Journal Review:精子DNAおよびクロマチン完全性と男性の年齢との関連

検査部の奥平です。
9月6日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。
今回ご紹介する論文は、

Relationships between the age of 25,445 men attending infertility clinics and sperm chromatin structure assay (SCSA®) defined sperm DNA and chromatin integrity.
Evenson DP, Djira G, Kasperson K, Christianson J.
Fertil Steril. 2020 Aug;114(2):311-320.
です。

通常行われている一般精液検査(精液量、精子数(濃度)、運動率、正常形態率、白血球数)は、男性不妊症の治療方針を検討する上では重要ですが、精子の質(機能)までを十分に評価することはできません。近年では、精子の質の指標の一つとして精子DNAの断片化(損傷)が注目されています。男性の加齢や、精子が酸化ストレスなどのダメージを受けると、精子頭部に含まれるDNAが断片化してしまうリスクが高まります。精子DNAの断片化レベルが高いと、胚の発生速度や品質・胚盤胞到達率・着床率・妊娠率が低下し、一方で流産率が増加することが分かっています。また、赤ちゃんの先天性奇形や疾患の発生頻度と関連していることも報告されています。よって、卵子の質だけではなく、精子の質も胚の発育や妊娠予後に影響しているのです。

精子DNA断片化を調べる方法はいくつかあるのですが、今回は精子クロマチン構造解析(SCSA)検査が用いられています。SCSA検査では、精子DNA断片化だけではなく、精子核の成熟度合いも測定することができます。この精子核の成熟度も、胚発育や妊娠成績に影響することが知られています。本論文では、不妊治療を受けている2万5千人以上もの男性を対象にし、年齢とSCSA検査結果との関連を調べ、また正常男性の結果とも比較しております。
詳細は動画をご覧ください。

ちなみに、医療法人オーク会でも、SCSA検査および精液中の酸化ストレス度を調べる検査を取り扱う予定となっております。準備が出来次第、また皆様にご案内いたします。