Oak Journal Review :ヒト3PN由来胚の発生能改善の試み

Oak Journal Review :ヒト3PN由来胚の発生能改善の試み

検査部の奥平です。
4月26日に院内で開催された勉強会より、論文紹介(Oak Journal Review)の内容をお届けします。

今回ご紹介する論文は、
Histone demethylase KDM4A overexpression improved the efficiency of corrected human tripronuclear zygote development.
Zhu HY, Kang XJ, Jin L, Zhang PY, Wu H, Tan T, Yu Y, Fan Y.
Mol Hum Reprod. 2021 Feb 27;27(3):gaab012. doi: 10.1093/molehr/gaab012.
です。

受精処理翌日(day 1)に、受精卵の細胞質中に3つ前核が確認されることがあり(正常な受精の場合、卵子由来1つ+精子由来1つの合計2つ)、三前核(3PN)胚と言います。3PN胚の出現は、通常の体外受精(c-IVF)と顕微授精(ICSI)両方で起こります。いくつかの研究では、3PN胚から余分な前核を人為的に除去し、2倍体の状態への修復が試みられています。しかし、この修正されたヒト3PN(ch3PN)胚の胚盤胞到達能は低いことが分かっています。
今回の論文では、ch3PN胚の胚発育能の低さの原因が、異常なエピジェネティクスにあると推察し研究を行っています。エピジェネティックな制御機構の一つであるヒストンのメチル化に着目し、それを人為的に調節することで、ch3PN胚の胚発育の向上を目指しています。
詳細は動画をご覧ください。

なお今回は、実際の臨床の話ではなく、基礎研究の内容となっています。
ですので、内容が理解しにくかったり、普段聞き慣れていない単語がたくさん出てきたりすると思います。
なるべく詳しく説明しておりますので、お付き合いいただけたら幸いです。
また、動画の最後に3PN胚に対するオーク会の考え方ものせていますので、そちらも併せてご覧ください。