良好胚と非良好胚で2個移植をした場合、出産率への影響は?

胚培養士の奥平裕一です。

出産率を高める治療法の一つとして2個移植が行われることがあります。2個移植をするにあたり、良好胚盤胞が1個だけあり、もう1個は質の低い胚から選択するとします(臨床では珍しくない例です)。その際、せっかく良い胚盤胞を移植するのに、質の低い胚が足を引っ張ることはないのでしょうか?

そのような不安や疑問にお答えする論文がありましたので、ご紹介します。

Is transferring a lower-quality embryo with a good-quality blastocyst detrimental to the likelihood of live birth?

Fertility and Sterility. 2020 Aug;114(2):338-345. doi: 10.1016/j.fertnstert.2020.03.027.

対象・方法

2013~2015年に、新鮮胚盤胞移植(day 5)を行った4640周期が対象の後ろ向きコホート研究です。出産率と多胎妊娠率について、良好胚盤胞1個移植と良好胚盤胞 + 非良好胚の2個移植とで比較検討しています。良好胚盤胞は、グレードがGardner分類AAもしくはABの胚盤胞となっています。また、非良好胚は、中品質胚盤胞(BA、BB、BC)、低品質胚盤胞(CC、CB)、初期胚盤胞、桑実胚となっています。

結果

良好胚盤胞 + 非良好胚の2個移植を実施した患者(889名)は、良好胚盤胞1個移植を実施した患者(3751名)に比べて出産率が有意に増加しました。けれども、多胎妊娠率も有意に増加しました。

非良好胚のステージを分けて検討すると、桑実胚を除いて出産率が有意に増加しました。また、多胎妊娠率は全てのステージで有意に増加しました。どちらも胚のステージが上がるにつれ増加していきました。

患者を38歳未満(3202名)と38歳以上(1438名)に分けて検討すると(38歳を基準にした理由は、アメリカ生殖医学会のガイドラインでは、38歳未満は単一胚移植を推奨しているからです)、年齢に関係なく出産率と多胎妊娠率は有意に増加しました。出産率において、38歳未満は7%の増加、38歳以上は12%の増加となり、高齢ほど2個移植の効果が高かったです。

解説

良好胚盤胞とともに非良好胚を移植しても、出産率にネガティブな影響を与えることはありませんでした。質の低い胚と子宮内膜とのネガティブな相互作用により出産率が低下するという仮説がありますが、本研究はそれを否定しました。そして、追加胚が胚盤胞であれば、グレードが低くても2個移植により出産率を高めることが示されました。しかし、出産率の増加以上に、多胎妊娠率の増加が顕著にみられました。これは、2番目の胚が良好な胚の着床にほとんど影響を与えず、それ自体も着床する潜在能力があり、多胎妊娠の増加につながることを示唆しています。

このように2個移植は出産率を改善する有効な治療法ですが、同時に多胎妊娠のリスクを著しく高めることに注意しなければなりません。

ちなみに日本産科婦人科学会の見解では、35歳以上または2回以上続けて妊娠不成立の女性に対して、2個移植が許容されています。