培養3日目の細胞数と妊娠成績

胚培養士の奥平裕一です。

今回は、「培養3日目の胚の細胞数が、凍結融解胚盤胞移植での妊娠成績に影響するか?」について調べた論文をご紹介します。培養3日目の細胞数は、分割期の胚を移植する際の妊娠率の有効な予測因子であることはよく知られています。しかし、胚盤胞移植における、培養3日目の細胞数と妊娠結果との関係は明らかになっていませんでした。

The effect of Day 3 cell number on pregnancy outcomes in vitrified-thawed single blastocyst transfer cycles.

Human Reproduction 2020年11月号から

対象・方法

2013年から2018年において、凍結融解周期での単一胚盤胞移植を行った患者(3543人)を対象にした後ろ向きコホート研究です。

培養3日目の胚の細胞数を6つのグループ(≤4細胞、5細胞、6細胞、7細胞、8細胞、>8細胞)に分け、出産率などを調べています。

結果

35歳未満の患者では、8細胞に比べ≤4細胞および5細胞では、臨床妊娠率と出産率が有意に低い結果となりました(ヒトの胚発生の場合、培養3日目では8細胞期胚への発育が目安のため8細胞を基準に比較しています)(表1)。一方、35歳以上の患者の場合、臨床妊娠率と出産率に関して有意な差は見られませんでした(表1)。

また、胚盤胞の品質は妊娠成績に関わる重要な因子であることはよく知られています。そこで、次に著者らは移植した胚盤胞を高品質と低品質に分けて、解析しています。

その結果、35歳未満の患者では、高品質の胚盤胞を移植した場合でも、3日目の細胞数が≤4細胞だと、臨床妊娠率と出産率が有意に低くなりました(表2)。そして低品質胚盤胞の場合、細胞数が≤4細胞だと出産率が有意に低く、5細胞だと臨床妊娠率と出産率が有意に低い結果となりました(表2)。一方、35歳以上の患者の場合では、胚盤胞の品質に関わらず有意な差は無かったです。

さらに著者らは、様々な交絡因子を調整後の解析も行っておりますが、その結果も同様に8細胞に比べ≤4細胞および5細胞では、臨床妊娠率と出産率が有意に低下していました。

解説

本研究から、35歳未満の場合、培養3日目の胚の細胞数が少ない(5細胞以下)と胚盤胞移植の妊娠成績が低下することが明らかになりました。また、形態的に良好な胚盤胞に発育しても、その妊娠成績が培養3日目の細胞数の影響を受けることを示したデータは大変興味深かったです。

培養3日目の細胞数が少ないと出産率が低下する明確な原因は不明ですが、著者らは胚の染色体の異数性率が一因ではないかと推察しています。実際過去に、3日目の8細胞と比較して、4-5細胞、6細胞および7細胞では、異数性率の可能性が高くなることが報告されています。さらに、女性の年齢と異数性の発生頻度との間には正の相関が見られます。よって、35歳以上の患者の場合では、本質的に異数性率が高く、細胞数の影響が弱まるため、結果に差が出なかったのであろうと考察しています。

以上の結果から、35歳未満の場合、移植時の胚盤胞選択の際に、胚盤胞の形態だけではなく3日目の細胞数も考慮すべきかもしれません。

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