妊婦の新型コロナウイルス感染における経過と予後について

妊婦の新型コロナウイルス感染における経過と予後について

医局カンファレンスです。

妊婦のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染における経過と予後についての論文がlancetに掲載されていたので紹介します。(Feb 12、2020)

2020年1月20日から31日にCOVID-19に感染した妊婦9名ついて検討しています。すべて帝王切開にて分娩となっています。年齢は26-40歳です。
糖尿病や高血圧、心臓疾患などの基礎疾患はありません。

妊娠27週から高血圧を認める患者が1名、妊娠31週から子癇前症を認めている患者が1名いましたが、妊娠経過は安定していたようです。その他1名が入院時にインフルエンザに感染していることが判明していました。

39度を超える高熱はおらず、36.5から38.8度の範囲内での変動であったようです。
4名が咳症状、3名が筋肉痛、2名が咽頭痛、2名が倦怠感、1名が胃腸炎症状を認めていました。
しかし、だれも重症肺炎症状はなく、人工呼吸器使用や死に至る患者はいませんでした。
すべての患者が酸素吸入と抗生剤投与をおこない、6名に対しては抗ウイルス薬を投与していました。

検査データでは、9名中5名がリンパ球減少、6名がC反応性タンパク(炎症時に上昇するタンパク)上昇がみられました。7名でWBC(白血球)は正常で低下はみられませんでした。
胸部CTでは8名に斑状のすりガラス陰影が認められました。
胎児および新生児死亡はなく、羊水、臍帯血、新生児の咽頭、母乳からはウイルスは検出されませんでした。

妊娠することで免疫が抑制され、横隔膜の挙上、酸素消費の増加、気管粘膜の浮腫などの生理的な変化によって呼吸器に細菌感染が起こりやすかったり、肺炎が重症化しやすい傾向になります。

9名という少数での検討なので、言い切れませんが、妊娠後期に感染した妊婦さんに関しては重症化がみられず、胎児にも影響がない可能性が示唆されました。
妊娠初期や中期での感染での予後はわかりません。今後の報告を待ちたいです。