体外成熟培養(IVM)を行った卵子から生まれた子とふつうの顕微授精によって生まれた子どもについて

体外成熟培養(IVM)を行った卵子から生まれた子とふつうの顕微授精によって生まれた子どもについて

医師の田口早桐です。

論文紹介です。
Fertility and Sterility 10月号より
タイトルは、「Obstetrical, neonatal, and long-term outcomes of children conceived from in vitro matured oocytes」

体外成熟培養(IVM)を行った卵子から生まれた子と、ふつうの顕微授精によって生まれた子どもを比較している論文です。体外成熟培養のグループ184 名、顕微授精のグループ366名の比較です。

後方視的研究で、どちらのグループも多嚢胞性卵巣の女性が対象です。多嚢胞性卵巣は、排卵誘発によって卵巣過剰刺激症候群になりやすいことが知られていますので、排卵誘発を最小限にして、未成熟卵子を取り出して体外で培養することでリスクを抑えることができます。

これまで、未成熟卵子を体外成熟培養してできた卵子からの受精卵、そして、そこから育った子供に対しては、さまざまなリスクが取りざたされてきました。染色体異常、発育異常、インプリンティング異常・・・。それらの異常は、体外で長期にわたって培養することで起こりやすくなる、と言われてきました。今回の論文では、生後7年半にわたり、産科合併症や出生児の発育に関して調査しています。

結論から言うと、両群間で、出産時出血や痙攣などの産科合併症、新生児の身長体重等の身体的発達や新生児期の異常、先天奇形の割合などに、差はみられませんでした。

いままで取りざたされてきたIVMによる異常のなかに、長期に培養することによって(培養液の組成によって差があるということが推察されていましたが)巨大児が生まれる、というものがありました。ウシやヒツジでも研究されています。しかし、そもそもIVMという治療を選択するのはほとんどが多嚢胞性卵巣に対してであり、多嚢胞性卵巣症候群が耐糖能異常を多く合併することが知られていますので、バイアスがかかっていることが推測されます。今回の研究では、両群とも多嚢胞性卵巣症候群を対象としており、結果として差がなかったということなので、培養液によって胎児の栄養状態が変化するということは言えないことがわかりました。

体外成熟培養は、我々が日常的におこなっていることであり、また当院で体外成熟培養に関する臨床研究をもうすぐ開始することもあり(厚生労働省よりヒト胚作成研究計画として承認されました)、より長期にわたる児への影響に関する論文が待たれます。