大気汚染と流産の関係

大気汚染と流産の関係

医局カンファレンスです。

大気汚染と流産の関係についての論文です。

2007年から2015年にアメリカのユタ州、ソルトレイクシティでの調査です。その期間に流産となった1,398名について検討しています。

結果は、流産と診断される前の7日間の平均NO2濃度が10ppd増加していると流産のオッズ比が16%増加することがわかりました。

また、流産前の3日間および7日間の平均PM2.5が10μg/mm増加していると流産のリスクが上昇していましたが、有意に上昇してるとまではいえませんでした。オゾンと流産の関係はみられませんでした。

(解説)
最近、大気汚染と不妊症、流産の関係の報告が出始めています。大気汚染に暴露される期間と不妊症の関係や体外受精の成績との関係などの報告があります。どの報告も、大気汚染が卵子や胚の成長、胎児の成長にかかわりがあるのではないかという結果です。
大気汚染物質による胎児への酸化ストレス、内分泌(ホルモン)の乱れ、異常な胎盤形成などが原因として挙げられます。大気汚染物質(酸化物質)によってDNAがダメージを受けやすくなっているとも考えられています。
また、以前のメタアナリシスでは高濃度のNO2に7日間暴露されると胎児の心奇形のリスクが上昇するという結果や早産とのかかわりも指摘されています。

このように、文明の発展とともに有害物質は増加し、地球温暖化や人体への健康被害も指摘されていますが、妊孕性への影響についても言及され始め、なお一層、有害物質を出さないようなエネルギーへの変換が急がれることを期待し、個人個人でも有害物質を出さないような心がけが必要だと思います。

(参考)
  • NO2は主に自動車、工場から排出される一酸化窒素(NO)の二次生成物。
  • PM2.5は工場の焼却炉からのばい煙や建設現場での粉塵、自動車、喫煙などから排出される2.5μm以下の粒子。肺の奥まで入り込む。
  • オゾン(光化学オゾン)は地表近くのオゾンとNOxやSOxが紫外線によって光化学反応をおこすことによって発生する酸化物質。いわゆる光化学スモッグ。