癌が卵巣機能に影響を及ぼしているか

癌が卵巣機能に影響を及ぼしているか

医局カンファレンスです。

癌と診断され、癌治療後による卵巣機能低下を考え、手術や抗がん剤治療の前に卵子や胚凍結される方がおられます。
今回、癌が卵巣機能に影響を及ぼしているかについてのメタアナリシスが報告されたので紹介します。
(Fertil Steril 2018;110:1347)

2018年5月までに英語論文のみでPubMedを使ってまとめられた結果です。713人の癌患者で722周期と1830人の癌患者ではない不妊患者で1835周期について検討しています。両群において、採卵数、成熟卵数、正常受精率に差はありませんでした。乳がん患者に関しての個別の検討でも採卵数、成熟卵数で差はありませんでした。

(解説)
この10年間で癌の死亡率は約1.5%減少しています。しかし、若年の癌は増加傾向にあり、卵巣機能低下や不妊、生活の質の低下をもたらすような癌治療をしなければならない場合があります。
癌と診断され、治療前に採卵を行い卵子や胚を凍結された方の結果です。

患者背景として、乳がんが70%、血液系の癌が12%を占めていました。
刺激方法はタモキシフェンやレトロゾール内服+高刺激やGnRHアンタゴニスト法(約75%)で採卵していました。そして少ないながらも妊娠についての報告もあり、50人のうち37人(74%)が妊娠し、26人(52%)が分娩に至ったそうです。

今回のメタアナリシスでは、癌が卵巣刺激に影響を与える可能性(卵子がとれない)があるのではないかという仮説のもとに調査されています。なぜなら代謝の低下や栄養不足といったことが考えられ、さらに2012年のメタアナリシスで癌患者は卵巣刺激に対する反応が低下しているという報告が出たためと思われます。
このときの症例数は少なく、今回は症例数が増加しその結果は否定されました。また、レトロゾールを使用した卵巣刺激法によって、BRCA遺伝子変異の乳がん患者さんの採卵数の増加につながったことも関係しているのではとの記載もありました。

癌治療および卵子や胚凍結技術の進歩により、癌治療後に子供を生む選択肢が広がりました。
さらに、双方の発展が進むことを望んでいます。