精子凍結の受精への影響

精子凍結の受精への影響

医局カンファレンスです。

非閉塞性無精子症もしくは高度乏精子症では、精子凍結することが受精に影響するのかについての論文が載っていました(Fertil Steril 2017;VOL.107:882-96)。

1999年から2011年までに非閉塞性無精子症でTESEをした患者103人、高度乏精子症の患者171人(射精精子使用)のそれぞれ新鮮精子、凍結精子使用での運動率、受精率、着床率、妊娠率、分娩率を比較検討しました。

① 新鮮な射出精子使用が138サイクル
② 凍結した射出精子使用が66サイクル
③ TESE後すぐに受精させたのものが22サイクル
④ TESE後に凍結しその後融解し受精させたものが48サイクル
でした。

サイクル数、男性年齢、女性年齢、血中E2、採卵数、受精数はすべてにおいて有意差はありませんでした。
有意差があったのは、①と②の運動精子使用率と受精率だけでした(①>②)。
③ と④の運動精子使用率、受精率、着床率、妊娠率、分娩率に差はありませんでした。

非閉塞性無精子症では新鮮精子でも凍結精子でも変わらないことが言えました。
無理にTESEの日に採卵日をあわせなくとも、先にTESEし凍結しておいてもよいという結論でした。
また、高度乏精子症では運動精子使用率と受精率は新鮮射出精子使用のほうががよいですが、着床率、妊娠率、分娩率は変わらずなので、こちらも凍結精子を使用しても変わらないだろうということが言えました。

過去の論文データを見ますと、新鮮精子のほうが受精率や良好胚率が良いというものがあるのですが、着床率や妊娠率は変わらないといったものもあり、はっきりと新鮮精子がよいというデータはありません。
今は、凍結の技術が進んでおり、凍結による精子へのダメージがかなり軽減されているのではと考えます。
なので、もし新鮮精子が使えなくても落胆されることはないということです。