第33回 日本受精着床学会総会・学術講演会に参加しました

第33回 日本受精着床学会総会・学術講演会に参加しました

検査部の川口です。

今回、東京で開催された日本受精着床学会総会・学術講演会に参加しました。

興味深い講演をたくさん聞くことができ、良い刺激を受けました。多くの講演がある中でも、私が興味深かった講演は「ICSIにおける精子染色体異常リスク」でした。

1990年代から20年間におけるヒト精子染色体研究により、精子における高頻度の染色体異常がヒトの流産に強く関与していることが明らかになり、一般集団の精子サンプルのデータからIVFで受精する能力を有するDNA切断型の精子染色体異常は平均14%にものぼり、個人差が数%~20%以上もあることが示されています。

ICSIによって異常精子を排除し正常な精子を選択的に顕微授精に用いることが出来れば少なくともART成績の向上が期待されます。ですから、染色体正常精子をいかに非浸潤的に選別するかは大きな課題です。

発表では精子頭部サイズとTUNEL法により検出したDNA切断の関連性を調査していました。
簡単な検査で精液性状が正常と判断された場合でも、精子頭部の形態を見ると、正常頭部精子と頭部の幅がやや狭い精子が同程度の割合で存在するそうです。頭部の幅が狭い精子は、TUNEL法によるDNA切断リスクが正常頭部精子の5分の1と低く、十分な数もあることからICSIへの適用に有効であるとのことでした。

一方、頭部サイズが大きい精子では、TUNEL陽性率、つまりDNA断片リスクが正常頭部精子より高く、小型精子では低いことが知られています。これらを考慮すると、核の凝集度合いが高い精子ほどDNA断片の頻度が低いことが見て取れる、と発表されていました。

当院では、精子のDNAフラグメンテーション(DNAのダメージ)を調べる特殊精液検査ハロースパームテスト、顕微授精(ICSI)時により良い精子を選別する為の方法として、IMSI、ヒアルロン酸成熟精子選別法を行っています。

IMSI(Intracytoplasmic morphyologically selected sperm injection)は、顕微授精(ICSI)に用いる精子を超高倍率で選別する方法です。通常のICSIでは顕微鏡の倍率を400倍にして精子を選びますが、IMSIではそれを6000倍まで拡大することで精子頭部の空胞など、より詳細な精子形態が確認でき、受精率や妊娠率の向上が期待できます。

ヒアルロン酸成熟精子選別法は、成熟精子のみが持つヒアルロン酸への付着能力を利用し、成熟精子を選別する方法です。この方法によって、成熟精子のみが卵子の透明帯に付着して受精する過程を再現し、DNAの状態が良好で染色体異常の起こりにくい精子が選別できます。

これらの方法に興味のある患者様は、ぜひスタッフにお声がけください。