卵子の質をあげるために、メラトニンを分泌させよう

卵子の質をあげるために、メラトニンを分泌させよう

医師の船曳美也子です。

Melatonin and the circadian system:
Contributions to successful female reproduction
Russel J.Reiter,Ph.D. Texas Fertility Sterility 2014;102:p321-8

細胞生物学の分野からの論文です。
メラトニンというホルモンがあります。脳の奥深く、ちょうど眉間の内側、脳の中央部にあるので、第三の目ともいわれる、松果体という小さな腺から主に分泌されます。

メラトニンの作用は二つあります。

1つは、1日24時間という慨日リズムを作るための、睡眠導入ホルモンとしての役割。
もう1つは、活性酸素を除去するラディカルスカベンジャーとしての役割です。
こちらは、抗酸化力がアンチエイジングに有効として注目されています。

今回は、このメラトニンが、女性の妊孕力(妊娠する力)にも影響するので、睡眠はしっかりとろう、というお話です。

1 )慨日リズム(Circadian rhythm)とメラトニン

慨日リズムとは、別名「体内時計」といわれますが、細胞が約24時間の周期で変動する生理現象のことをいい、動植物や菌類などほとんどすべての生物に存在する進化上最も古い細胞機能です。
日中の太陽の紫外線は、DNAの合成を損傷させるので、夜間に細胞分裂をために、進化したと考えられています。1997年人間の細胞内に時計遺伝子が発見され、注目をあびました。

慨日リズムの調整をするのが、松果体から分泌されるメラトニンです。光が眼から入ると、脳内の視交叉上核(SCN)に集まり、そこから、松果体や、抹消の細胞に神経を通じて光刺激がつたわります。
同時に、光が暗いと松果体からはメラトニンが分泌され、眠気を催しますし、明るいと抑制されます。

2 )生殖とメラトニン

このメラトニンですが、松果体以外でも産生されています。卵胞の顆粒膜細胞です。
なんのためにかとういうと、卵子を守るため!

2009年の論文では、
・卵胞内の活性酸素が増えると卵の質がさがった。
・卵胞内の活性酸素の量とメラトニンの量が逆相関している。

とあります。

卵胞内の活性酸素が多量だと細胞障害されます。メラトニンは、その活性酸素を打ち消すので、抗酸化物質、ラディカルスカベンジャーと呼ばれます。
正義の味方っぽい名称ですが、生殖細胞に害にならないようにメラトニンが卵子をまもっているわけです。

つまり、卵胞が成熟するにつれ活性酸素も増えますが、卵胞内のメラトニン量も増加し、排卵時には血中の2~3倍にもなっています。が、さらに、卵胞内のメラトニン量は、血中からも移行するので、24時間の日内変動があることもわかっています。

最近、寝る前のPCやスマホの光刺激による睡眠障害が問題になっています。
特にブルーライトは、メラトニンの分泌量をへらします。卵子の質を高めるためにも、できるだけ朝活でいきましょう!