ウルトラロングプロトコールとロングプロトコールの新鮮胚移植の結果

ウルトラロングプロトコールとロングプロトコールの新鮮胚移植の結果

医師の田口早桐です。

Does prolonged pituitary down-regulation with gonadotropin-releasing hormone agonist improve the live-birth rate in in vitro fertilization treatment Fertility and Sterility Vol. 102, No. 1, July 2014

いわゆるウルトラロングプロトコールとロングプロトコールにおける新鮮胚移植の結果を比較した論文です。

ロングプロトコールは、排卵誘発周期の前周期の黄体期からGnRHアゴニストを用いて下垂体のダウンレギュレーションを行う方法で、もっともスタンダードな排卵誘発方法と言われています。
ウルトラロング法というのは数ヶ月にわたってGnRHアゴニスト(リュープリンやスプレキュア)を用い、充分に下垂体ホルモンを抑えてから排卵誘発する方法です。ほとんどの場合は子宮内膜症の治療を兼ねた体外受精として行います。例えば子宮腺筋症でなかなか胚が着床しない場合など。

この論文では、腹腔鏡検査によって子宮内膜症を除外しています。
子宮内膜症がなくても長期間ホルモンをおさえることで、妊娠率に影響するかを調べています。
結果、長期にわたってGnRHアゴニストを用いると、普通のロングプロトコールに比べて妊娠率が上がりました(62.02%vs 56.87%)。生産率も55.56%に対し45.73%と高い結果になりました。

どうしてこういう結果が得られたか。考察では、胚に良い影響があったというよりは、子宮の受容性が向上した可能性が高いとしています。というのも、子宮内膜厚はウルトラロング法のほうが有意に厚かったとのことです(1.11±0.23cm vs 1.06±0.18cm)。
また、長期に月経を止めることで、子宮内のサイトカインを抑えることになるから、ということを示唆する参考文献も紹介されていました。

ただ、刺激周期で複数個の卵胞が育った場合、OHSS予防のために全胚凍結することが一般的ですから、そのまま試してみる機会はあまりありませんが、子宮の受容性ということに関しては大きなヒントになりました。