日本受精着床学会(検査部)…その2

日本受精着床学会(検査部)…その2

エンブリオロジストの天野です。

8/8、8/9に別府で開催された第31回受精着床学会に行ってきました。

毎年いくつかの学会に参加し、毎回演題も出しているのですが、今回は「OHSS発症症例と非発症症例における卵胞液中の分岐鎖アミノ酸/チロシン濃度の比較」でした。

OHSSとは、卵巣過剰刺症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome)のことで、排卵誘発剤が効き過ぎて卵巣が腫れることにより、下腹部痛や腹部の張り、胸腹水の貯留、ひどい場合は全身状態の悪化などが起こります。最近、カベルゴリンという、ドーパミンと同じ働きをする薬剤が、OHSSの重症化を防ぐ効果があるということで注目されています。

ドーパミンは体内ではチロシンから合成されます。今回、OHSSを発症した群と発症しなかった群で、卵胞液中のアミノ酸濃度を測ると、年齢やBMIなどの条件を一定にしているにも関わらず、OHSS発症群ではチロシンが低いことが分かりました。

このことから、チロシン欠乏がドーパミン合成低下につながり、OHSS発症に至った可能性が推測できます。
また、この結果は、カベルゴリンが重症OHSSの発生を減少させることを裏付けていると考えられます。

今回の発表は以上でしたが、さらに検討を続けてOHSS発症に至る経路が解明できれば面白いと思います。
他の演者の発表などは後日お伝えしたいと思います。