男性ホルモンは正義の味方?

男性ホルモンは正義の味方?

医師の田口早桐です。

体外受精が普及し、より年齢の高い女性が体外受精を受けるようになって、問題となってきているのが、poor responder (低反応の人たち)に対する治療方法です。
卵胞が発育して卵子が取れないことには治療のスタート地点にも立てないので、あれこれ手を尽くすことになりますが、ovarian reserve(卵巣内の卵の在庫)の減少が主因の場合には、難しいことも多いです。

少量のエストロゲン(女性ホルモン)を前周期の黄体期から投与することが有効であるという報告、一般に血液細胞を増やす因子であるG-CSFを卵胞刺激に併用する、成長ホルモンを投与する方法、いろいろありますが、現在、卵胞発育の初期の段階に効くと言われているのが、実は男性ホルモンである、テストステロンなのです。

前胞状卵胞と呼ばれる初期段階の卵胞から胞状卵胞(超音波で観察できるサイズ)に発育する過程で、このテストステロンが必要なことが分かってきました。
男性ホルモン受容体のノックアウトマウスでは、前胞状卵胞が多数存在しても、閉鎖卵胞となり、胞状卵胞がほとんど存在しないようです。ヒトの場合でも、同様の結果を示唆する臨床データが出てきています。

現在、卵巣の反応が悪い女性にアンチエイジングのサプリメント、DHEA(注:日本では医薬品として扱われています。)がよく用いられますが、これも同様の機序に基づいています。
DHEAは男性ホルモンの前駆物質(原料)だからです。DHEAを飲むと、体内でテストステロンに変換されます。DHEAを飲んでいるのに、あまり効果がない、という場合、DHEAをテストステロンにうまく変換できないのかも知れず、その場合は、直接テストステロンを補充する方が効果的なこともあります。

テストステロンというと、多のう胞性卵巣の女性で高値になりやすく、多毛やにきびの原因になるなど、女性にとってあまり良くないイメージでしたが、卵胞の発育に必要だったとは。私の中では、悪者からヒーローへと、すっかりイメージが変わりました。