ボストン出張

ボストン出張

医師の船曳美也子です。

国際肥満学会主催の「妊娠と肥満」という分科会に出席、発表するために数日間、USAボストンに出張していました。

海外で肥満症の定義はBMIが30以上。さすがにBMIが30以上ということになると日本では5%程度しかいませんが、世界的な肥満人口の増加とともに、肥満の妊婦も増加しています。ちなみに、テキサスのメキシコ系アメリカ人の妊婦では38%がBMI30以上で、妊娠中の肥満の問題がクローズアップされています。

妊娠中の肥満がなぜ問題になるのかというと、妊娠中の合併症や分娩時の合併症が増えるためで、児の問題でいくと4,000gをこえる巨大児が増えることです。

どうして肥満の妊婦の胎児が4,000gを超えることが多いのでしょうか。
単純に考えると、母親が栄養過多の状態にあるから、児が大きくなるわけで、今まではそう考えられてきたのですが、最近、どうもそれだけでではない事がわかってきています。単に栄養ではなく、胎盤を介して、分子レベルで母から子への影響があることがわかってきました。

肥満するとアディポネクチンという体を炎症から守るホルモンが減り、インスリン抵抗性が高くなる(インスリンが効きにくくなる)のですが、母親が肥満でインスリン抵抗性が高い状態にあると、母親と同様に、児もアディポネクチンが低い状態、インスリン抵抗性の状態になっており、児が肥満になりやすくなるのです。
このように原因が分子レベルで解明されるようになっています。

分子レベルといえば、カロリー制限により、サーチュイン遺伝子という長生き遺伝子が活性化されることはNHKでも以前とりあげられたのでご存じでしょう。

この、サーチュイン遺伝子は体のいろいろな組織に発現しますが、卵巣の卵胞細胞や、子宮の着床時の内膜にも発現することが、先日の日本産婦人科学会でも報告されていました。胚盤胞の発育や着床にサーチュイン遺伝子の活性化が有効に作用する可能性があるのです。

当院でも、ダイエット外来でカロリー制限をして体重を落としたあとで妊娠する報告を以前しましたが、サーチュイン遺伝子の活性化が関係しているかもしれません。

しかし、そうはいっても、期間限定のダイエットはともかく、ずっとカロリー制限するわけにいきません。
そこで、サーチュイン遺伝子を活性化させるための「レスベラトロール」というサプリメントがアメリカで大流行しています。

ちなみにこのレスベラトロール、赤ワインにもはいっていることで有名ですが、サーチュイン遺伝子を活性化するレベルにするには、100本ほどを飲まないといけない計算になりますから、「赤ワインで長生きを」というのは少し誇大広告気味で、現実的ではありませんね。