無神論者の初詣

無神論者の初詣

理事長の中村嘉孝です。新年、明けましておめでとうございます。

年賀状は数年前から書かなくなっている上に、今年は大掃除もせず、年越し蕎麦も、お節も食べず、テレビも見なかったので、いつの間にか元旦が過ぎてしまいました。

「元旦からコンビニが開いているので、正月らしくなくなった」などとよく言われますが、当院では不妊外来を年中無休で開けていますし、妊娠されてからの切迫流産で入院中の方もおられます。

帰省をはじめ、色々としなければならないことが山積みの中、それでも妊娠のチャンスを絶対に逃すまいと、一周期、一周期を大切にして年末年始も体外受精を受けておられるご夫婦のことを考えると、とても正月気分ではいれません。

「そんなわけで、季節感がないのです。いやはや、因果な仕事ですよ」と、年賀状を書かないことを人から咎められるたびに、そんな言い訳をしているのですが、まあ、ただの不精ですね。

それと、人は年齢と共に伝統主義者になっていくものだ、と思っていたのですが、むしろ逆のようで、二十代の頃の方が保守に傾倒していたように思います。
私も伝統的な価値観を尊び、儀礼を重んじることにやぶさかではないのですが、生来の面倒くさがりの性分に加えて、生殖倫理における伝統主義者の物言いに、少々、嫌気がさしていることが影響しているのかも知れません。

さて、何の行事らしきこともしなかった今年の正月ですが、初詣にだけは、出かけるつもりでいます。
そして、無神論者が今年も勝手なお願いです。
また一年を無事に過ごせますように。
そして、不妊で通っておられる皆様に、少しでも早く子宝が授かりますように。

本年も職員一同、全力で取り組んでいく所存です。宜しくお願いします。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「正統とは、単にしばしばいわれるとおり道徳と秩序を守る唯一の信頼すべき守護神であるばかりでなく、同時にまた、自由と革新と進歩の唯一の論理的な守護神だということだ。」
GKチェスタトン 『正統とは何か』