子宮内膜症と不妊…その1

子宮内膜症と不妊…その1

医師の船曳美也子です。

子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)。これは月経や妊娠に関係する、婦人科系の病気の一つです。こどもを作れる年齢の女性の約10%もいらっしゃいます。「部屋とYシャツと私」の曲で有名な平松愛理さんが重症な子宮内膜症だったそうです。
その症状のつらさや治療のこと、その後女児を出産されたことなどをつづられた本も書かれているようです。また、海外ではマリリン・モンローも内膜症だったそうです。

月1回おこる月経は、子宮の内で膜が分厚くなってそれが剥がれ落ちたものです。子宮の内膜は細胞と細い血管でできています。
なので、はがれるときに出血するのですね。
子宮内膜症とは、その月経時にはがれる子宮内膜が、子宮の中以外で発生してしまう病気です。

子宮の中以外・・・よくあるのが、卵巣のなか、子宮の筋層のなか、そして、骨盤底部です。
正常ならば、出血とともに剥がれ落ちる内膜。それが、異常な場所に(異所性といいます)できてしまうとどうなるか。やはり月経周期にあわせて分厚くなるのですが、出血したあと流れていく場所がないですよね。
その異所性に定着した場所で吸収されるのですが、そのときに周りの組織も繊維化といって固くしたり、癒着させてしまうのです。
これが、それぞれの異所でおこるとどんな症状がでるのでしょうか?

正常ならばやわらかい骨盤底部の膜に物があたって骨盤周辺神経は痛みを感じません。
が、骨盤底部の膜が繊維化して固くなったところに(角質化したかかとを思い浮かべてください)物があたると伸びが悪いので神経は強く痛みを感じます。これが、骨盤底部に内膜症ができた場合の、性交痛です。

子宮は、妊娠の9ヶ月間に約7cmから約36cm、容量にして約10ml. が約5ℓも増えるぐらいに伸びる臓器です。
なので、子宮の筋肉は正常であれば進展性にすぐれています。が、これも、子宮内膜症の場合、子宮筋層内で子宮内膜が出血し、吸収される過程で固くなるため、月経時の子宮収縮を強く感じます。
これが子宮筋層内に内膜症ができた場合の、重い月経痛です。

卵巣のなかに出血するタイプの内膜症もあります。が、卵巣は伸展する必要がないため、卵巣内に内膜症があっても痛みを感じません。なので、検診や来院されて超音波ではじめて見つかることが多いです。
卵巣中ではがれた出血がたまって時間がたつとチョコレートの様にみえることから、チョコレート嚢腫(のうしゅ)とよばれます。吸引してみると、内容液は本当に湯煎したチョコレートみたいです。