胚移植直前の子宮内hCG注入が体外受精の成績を上げる!??

胚移植直前の子宮内hCG注入が体外受精の成績を上げる!??

医局カンファレンスです。

不妊治療を受けたことのある女性の多くが排卵誘発剤・hCGの筋肉注射の経験をお持ちではないでしょうか。
このhCGを胚移植数分前に子宮内に少量注入すると、体外受精の成績が良くなったという研究がエジプト・カイロのグループから発表されました (Mansour R et al., Fertil Steril. 2011 Dec;96(6):1370-1374.e1.)。

女性患者の平均年齢が29歳と、日本の不妊治療のスタンダードから見ると若いのが特徴です。
一方で、平均不妊期間が6-7年(中には20年というカップルも)と非常に長く国による事情の違いを垣間見ることが出来ます。
対象は男性因子(ただし無精子症は除く)による不妊症で、顕微授精とday2または3新鮮初期胚移植で治療されています。

患者を無作為に2群に振り分け(ランダム化)妊娠の結果を前方視的に追跡したもので、この点は高く評価されます。
1群は通常どおりの胚移植、もう1群は移植の平均7分前にhCGの子宮内注入を受けています。
当初100単位または200単位で注入を始めたものの効果が認められず、500単位に増量したところ有効だったということです。
E2値、採卵数、成熟卵数、受精率などに差はありませんでした。
胚移植数はどの群も2.8-2.9となっており、ほとんどの場合3個移植と考えられます。

さて、その妊娠転帰ですが、

臨床妊娠(超音波で子宮内胎児心拍確認)率が、
通常胚移植群で60%(105人中63人)、hCG子宮内注入群で75%(107人中80人)

着床率(恐らくは心拍確認数÷胚移植数?)は、
通常胚移植群で29%、hCG子宮内注入群で41%

継続妊娠率や生産率については詳細不明です。

このレポートは昨年の米国生殖医学会学術集会でも注目されていました。
胚から分泌されるhCGが子宮内膜に作用し、着床に有利に働くとするクロストーク仮説を裏付けるものかもしれませんが、それにしても臨床妊娠率が60%というのは驚異的な数字です。
このような高い数字を見るのは初めてで、これ以上コメントの仕様がありません…