言葉

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理事長の中村嘉孝です。

平野復興相が、津波で亡くなった同級生を「バカなやつ」と呼んだと批判を受けています。それが不適切発言というべきなのか、言葉狩りにすぎないのか、正直、私にはわかりません。

報道にあるような、「被災者をバカというのは何ごとか」という意見は的外れです。国語の試験で「筆者の真意を述べよ」という読解力問題であれば、「友の非業の死を悼む心情を、バンカラな感じで逆説的に表現した」ということになろうかと思います。
まして、被災者一般をバカにしているなどというのは、とんだ言いがかりです。

しかし、だからといって「言葉狩り」と断定しにくいのは、この発言が、本当に友人の死を悼む気持ちのほとばしりであったのか、この機会に自分のバンカラな部分をアピールしたかっただけなのか、本心が分からないからです。こればかりは、答えのない人間洞察の問題でしょう。
平野氏は東大卒の官僚出身だそうですが、もしかしたら、それが影響しているのかも知れません。

さて、医師-患者の関係でも、言葉や所作のニュアンスが重要です。
とりわけ、精神的なストレスの大きい不妊治療ではそうだと思います。私自身も、「冷たい言い方をされた」、「失礼な対応をされた」というご批判をしばしば頂き、その度に反省することしきりです。

着床不全や流産などは確率的現象なので、あまり思い詰めて精神的に追い込まれることのないように、敢えて、あっさりと説明したりします。それで前向きの気持ちになっていただける方が多いのですが、中には冷たく感じられる方もおられます。

また、私には全く同じことを言っていると思えるのに、あるドクターには納得がいかないけれど、別のドクターには癒された、言われることもあります。
確かに、同じ言い方をしても、誰からどんな所作で言われるかは大事です。

私も、東大出の官僚から「バカな人ですね」と言われるとカチンときますが、潤んだ瞳の女性から「バカな人ね…」って言われるのは、全く大歓迎ですから…。