不妊治療助成金と保険適用

不妊治療助成金と保険適用

医師の田口です。

不妊治療「何度でも」自己負担なしに茨城・常陸大宮市が補助拡充へ

茨城県常陸大宮市は4から、保険の対象かどうかにかかわらず、あらゆる不妊治療が何度でも無料で受けられるようにする方針を決めた。県内の他市町村と比べても手厚い支援で、子どもを産み育てたいカップルを呼び込む狙いがある。

不妊治療はこれまで、大半が公的医療保険の対象外で、代表的な治療の一つの体外受精には1回平均50万円がかかると言われている。政府は保険の枠組みを見直し、4月以降は体外受精などの治療が保険対象となる。

市は昨年春から、年齢に応じて3回か6回を上限に、自己負担なしで治療を受けられる制度を始めている。治療1回につき、国と県の補助金計30万円を超える費用を補助している。

補助額の上限は元々ないが、新年度からは、治療回数の上限もなくす。保険が適用される治療の場合には3割の自己負担分を補助する。保険適用外の治療も市が全額を補助し、自己負担なしで何度でも利用できる。所得制限も設けない。事業費として、1159万円を計上した。

(朝日新聞デジタル 2022年03月03日 0856分)
https://www.asahi.com/articles/ASQ326W81Q2JUJHB013.html 

令和4年度診療報酬改定に関する資料が厚生労働省より公開されました。元の資料は膨大なので、その中で不妊治療に関係することに関しては、日本産婦人科学会のHPで見ることができます。

https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20220304_kourousho1.pdf

ここのところ、体外受精の保険適用に向けてのシステム調整等で、院内各部署大忙しです。保険点数改正の際には多かれ少なかれこんな感じですが、今回は、その100、いや1000倍くらい、大変です。保険算定する際には、条件が細かく決められていますので、それを確認して書類を揃える作業があります。役所というところが書く文章は、なぜこうも理解に時間がかかるようになっているのか・・・
いや多分、私の頭が鈍っているせいでしょう。

不妊治療助成金が4月でいったん打ち切りになるので、情報のフォローをしていると、上のニュースを見つけました。茨城県常陸大宮市で、不妊治療が完全に自己負担なしで受けられるように助成をするとのことです。子供を望む夫婦を呼び込む意図があるとのことですが、回数制限も所得制限もないというのは、素晴らしい。実際にはかなり回数を重ねないと妊娠に至らないことも多いからです。ただ、やはり年齢制限は43歳、法律婚のみになっていますね。この制限もなくす、もしくは緩めて欲しいと思います。年齢が高ければ高いほど、回数を重ねないと妊娠に至らないし、事情で事実婚を選択するカップルも多いからです。

兵庫県明石市の子育て支援はうまくいっているようで、在住の患者さんから満足だという声をよく聞きました。不妊治療助成や子育て支援で、若い世代が住みやすい町にするのは大切だと思います。

2020年に不妊治療助成金の所得制限が撤廃になったところで、次は保険適用、今はそのはざまです。先のブログにも書いた鳥取県、そして今回の常陸大宮市のような先進的取り組みが、大阪及び東京都で、どこまで活用され、補助金+保険適用の特例を実現させ、現在の保険適用枠組みを段階的に事実上融解させるのか。行方を見守るしかありません。