ミズイロと学ぶ!精子DNAの状態を調べる「DFI検査」とは?(前編)―精液検査ではわからないこと―

ミズイロと学ぶ!精子DNAの状態を調べる「DFI検査」とは?(前編)―精液検査ではわからないこと―

精液検査では、精液量や精子濃度、運動率、形態率などを調べます。しかし、これらの結果が正常であっても、なかなか妊娠に至らないケースがあります。「原因がわからない」と言われて、モヤモヤした経験がある方もいるかもしれません。

そうしたケースの背景のひとつとして、近年注目されているのが「精子DNAの状態」です。
今回はミズイロと一緒に、精子DNAの状態を調べる検査についてみていきましょう。

精液検査だけでは、わからないことがある

精液検査では、精子の「数」「動き」「形」などを調べます。いわば、精子の量や状態に関する情報です。一方で、精子の頭部に収納されている「DNA(遺伝情報)」そのものの状態は、通常の精液検査では調べることができません。見た目や動きが良好でも、DNAにダメージを抱えている精子が一定数存在することがあります。

実は、精子のDNAが傷ついていることがある

精子は、卵子と出会って受精し、次の世代へ遺伝情報を渡す役割を持っています。その遺伝情報は、精子の頭部にぎゅっと収納されたDNAに書き込まれています。 このDNAの損傷が多いと、受精や胚の発育に影響する可能性があると考えられています。

見た目や運動率が正常でも、「DNAに損傷があることがある」これが、精液検査だけではわからない要因のひとつです。

その傷ついた精子の割合を調べるのが「DFI検査」

こうした精子DNAの状態を調べる検査のひとつが「DFI検査」です。

DFIは「DNA Fragmentation Index」の略で、精子のDNAが損傷している割合を示す指標です。DFIの数値が高いほど、DNAに損傷のある精子が多いことを示します。

DFI検査では、専用の染色を行った精子を検査機器で測定し、DNAの状態を評価します。

また、この検査ではHDS(High DNA Stainability)という精子核の成熟度を示す指標もあわせて評価します。HDSの数値が高いほど、核の成熟が不十分な精子が多いことを示します。

引用元:漫画「胚培養士ミズイロ」おかざき真里 小学館 週刊スピリッツ連載 単行本第11巻第60話より

下の図では、検査で評価される精子を色分けして示しています。

青:DNA損傷のない成熟した精子
赤:DNAに損傷のある精子 → DFI
緑:核が未成熟な精子 → HDS

DFIが高いと、何が起こるの?

DFIが高い場合には、受精率や胚発生率、妊娠率の低下や、流産リスクの上昇との関連が報告されています。

とはいえ、DFIはあくまでも妊娠の可能性を考えるための一つの指標です。

DFIが高いから妊娠できない、低いから必ず妊娠できる、というものではありません。

精液検査の結果や、これまでの治療経過などとあわせて、総合的に判断していくことが大切です。

DFIと一緒にわかる「HDS」って?

DFI検査では、DFIとあわせて「HDS」という数値もわかります。これは、まだ十分に成熟しきっていない精子がどれくらいあるかを示す指標です。

こうした未成熟な精子が多い場合も、受精率や胚の質、妊娠率の低下との関連が報告されています。また、流産との関連を示す報告もあります。

DFIが「DNAの傷の多さ」を、HDSが「精子の成熟度」をみている、とざっくりイメージしておくとわかりやすいでしょう。

年齢を重ねると、DFIは上がりやすくなる

DFIは、不妊の有無にかかわらず、加齢とともに上昇することが知られています。実際、年代別の平均値を見ると、20代では12.6%程度なのに対し、40代では19.5%、60~80歳では39.3%まで上昇するというデータもあります。

若いから安心、というわけではありませんが、年齢が上がるほどDFIの数値も上がりやすい傾向があることは知っておくとよいでしょう。

数値は、あくまで判断材料のひとつ

DFIやHDSの数値は、精子の状態を考えるための一つの指標です。それだけで治療方針がすべて決まるわけではなく、精液所見全体やこれまでの治療経過なども踏まえながら、一人ひとりに合った選択肢を検討していきます。

なお、オーク会ではDFI 24%以下、HDS 10%以下を目安としています。基準値は検査方法などによって異なる場合があるため、検査結果については医師に確認しましょう。

DFI検査は、どんなときに行われるの?

「精液検査では大きな異常がないのに、なかなか妊娠しない」「良好な胚を移植しても、結果につながらない」「流産を繰り返している」などの状況が続くと、原因がわからないまま不安だけが募ってしまうことがあります。

DFI検査は、そうした「見えない要因」を考えるための検査のひとつです。

以下のような場合には、DFI検査が検討されることがあります。

・精液検査の所見が良くないのに、原因が見当たらない方
・精液所見は良好なのになかなか妊娠に至らないカップル
・低受精率や胚の発育不良に悩んでいるカップル
・流産を繰り返す経験のあるカップル
・40歳以上の男性の方
・精索静脈瘤がある、または手術歴がある男性の方

次回は、DFIが高くなる背景を探ります!

精子の「数」や「動き」だけでなく、DNAの状態も妊娠のしやすさに関わっていることがあります。では、そもそもなぜ精子のDNAは傷ついてしまうのでしょうか。 次回の後編では、精子DNA損傷の背景のひとつと考えられている「酸化ストレス」と、その状態を調べるORP検査について紹介します。

<<ミズイロと学ぶ!高倍率で精子を見極める「IMSI」とは?(後編)~より詳しく観察して選ぶ顕微授精の技術~

次回へ続く

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