AMHが万能なわけではありません

AMHが万能なわけではありません

医師の田口早桐です。

1~2ヶ月前にも書きましたが、テレビで取り上げられたせいか、卵巣予備能(卵巣年齢)の指標となるAMH anti mullerian hormoneの測定を希望して来られる方が増えました。
中にはまだ独身で子供を作ることは考えていないが、今の状態を知っておきたいということで、友人同士で連れ立ってくる方もおられます。

当院の男性不妊外来にも、精液の検査を受けたいという問い合わせも増えているようです。不妊治療を前提にしている場合に限りますが、事情に応じてお受けしています。

AMHを測っていると、年齢に対してとても卵巣年齢の若い方もいます。
ご本人はもちろん嬉しそうで、「まだまだ先延ばし可能」と言う風に考えているようだと、ついつい、「量と質は違いますよ。AMHは質を反映しないと言われているので、注意が必要です。早いに越したことはありません。」と言ってしまうこともあります。

またその反対に、若くても予想外に低いということがあり、驚くことがあります。
ご本人にはもちろん、「子供をつくるつもりなのであれば、早めに取り掛かるほうがいいかも知れません。」と伝えますが、ご本人も戸惑うばかり。

しかし J Clin Endocrinol Metab,96(12):3609-3614,2011で、低ゴナドトロピン性の性腺機能低下症、つまり、下垂体(頭の中にある)からのホルモンが少なくてAMHが低い女性に対して卵巣の排卵誘発刺激を繰り返すと、卵胞の発育と共にAMHの値も上昇してきた、という報告がありました。

たしかに、AMHは卵巣の中の、ゴナドトロピン(下垂体からでる卵巣を刺激するホルモン)に反応する発育段階の卵胞を反映しますから、それ以前の卵胞がないのだということにはなりません。
平たく言うと、もっと奥のほうの倉庫に在庫があるかもしれない、ということです。
症例によっては、AMHは卵巣機能の指標としては適切ではないということです。

AMHに関しては今後まだまだ報告が出るでしょうし、当院でもデータ分析を進めていくつもりです。
また卵巣機能評価の指標についてもまだまだ検討が必要だと思います。