体外受精と化学妊娠

体外受精と化学妊娠

医師の田口早桐です。

A comparison of biochemical pregnancy rates between women who underwent IVF and , fertile controls who conceived spontaneously -Human Reproduction, Vol.30, No.4 pp.783-788,2015

化学妊娠と言う言葉があります。経験された方もあるかもしれませんが、妊娠反応は陽性に出ても、そのまま消えてしまう状態をいいます。
子宮内に胎嚢(胎児の入っている袋)が見えてくることなく、妊娠反応そのものも消えてしまう状態を言います。ごくごく初期の流産という言い方もできます。

ただ、最終的に胎嚢の確認が出来ないので、子宮内に着床したのかどうかは最後までわかりません。子宮外妊娠になっていた例も含まれていると考えられています。

この化学妊娠ですが、体外受精をしていると、本当によく遭遇します。
体外受精の場合は4週くらいの非常に早い段階で血中のHCGと言うホルモンを測って妊娠したかどうかを判定します。そのときに陽性に出ていても、しばらく経つとと数字が減ってしまうことがあります。

いずれにせよ、体外受精の場合に多いと考えられている傾向にあります。
というのは、体外受精の際は、新鮮周期であれば、排卵誘発剤の注射を打つし、融解胚移植の場合でもホルモン剤をしようするので、子宮内膜の状態が通常の排卵周期とは違って着床に不利なのではないかと考えられているからです。

しかしこの論文によると、体外受精のほうが化学妊娠が多いということはないとのことなのです。
自然妊娠の場合の化学妊娠に関する論文3篇の中にあるデータを併せてみて、それと筆者らが経験した体外受精による妊娠とを比べてみると、化学妊娠の率は、体外受精で14%、自然妊娠の場合は18%だったとのことです。

また、解析の結果、排卵誘発剤等の使用の有無が化学妊娠を増やすという結果にはならなかったということでした。唯一、影響を与えた因子として、分割期より胚盤胞の移植のほうが化学妊娠が少ないという結果になったようです。

体外受精で化学妊娠が多い、というのは私も印象として持っていましたから、少し驚きでした。
今後原因の究明が待たれるところです。