感染

感染

理事長の中村嘉孝です。

昨日、鶏の卵巣の中でも菌に感染することがあるいう話をしましたが、人の卵巣でも、よくわからない感染を起こすことがあります。

子宮内膜症が卵巣にできるチョコレート嚢腫に、感染がおきることがあります。しかし、普通、婦人科の感染は上行性の感染で、外陰部から腟、子宮、卵管というふうに外に通じている部分から伝わります。卵巣の中なので、本来は無菌の状態です。

確かに、採卵の時の穿刺で外部から菌が持ち込まれて感染する場合もありますが、チョコレート嚢腫を穿刺しないように注意していても感染する場合や、そもそも採卵をしなくても感染する場合もあります。当院でも数例あり、アメリカ不妊学会をはじめ、いくつかの学会で症例報告をしました。

細菌感染症というのはもう学問的には時代おくれで、難しくない疾患だというように、私たち医師も考えがちですが、このように実は、まだまだ、よくわからないことがあります。

今、北宅先生を中心として取り組んでいる慢性子宮内膜炎による着床障害もその一つで、最近まで、慢性に子宮内膜炎が起こるという考え方自体がありませんでんした。実際、私も北宅先生から聞くまでは知りませんでしたし、彼が染色したプレパラートを見るまでは、半信半疑でした。

胃潰瘍がピロリ菌の感染によって起こるということを、最初は誰も信じることができなかったように、まだまだ、不妊治療の専門医の間でもほとんど知られていませんが、おそらく数年の間に、反復着床不全に対する必須の治療として知られるようになると思います。