ペテン

ペテン

理事長の中村嘉孝です。

首相の辞任の時期を巡り「詐欺だ、ペテンだ」と騒動になっています。

虚実ないまぜの駆け引きが政治の世界かと思っていたのですが、「政治家同士の約束を守れないならペテン師だ」という鳩山氏の言葉が面白かったです。

『詐欺とペテンの大百科』(カール・シファキス著 青土社)という本があります。
古今東西の詐欺の事例を集めてあり、「大百科」というだけあって大部の作品です。
最初に見たときには、「よくまあ、こんなものを書くとは物好きな」と思ったのですが、良く考えると、買う方も買う方でした。

さて、同書には、「不妊治療詐欺」という項目があり、次のように記されています。
-妊娠もしていないのに妊娠反応を起こさせる特別な薬による治療を一回5千ドルで行なっていた。
その後医師は、流産したのでもっと高価な治療と検査が必要だと告げてがっかりさせていた。

「妊娠していないのに妊娠反応を起こさせる」というのは、hCGの注射のことだと思います。
hCGは胚の着床を助けるための黄体刺激に使われることがあるのですが、そのために妊娠反応が出てしまう場合があります。

こんなあからさまなペテンは別にしても、体外受精クリニックが、宣伝のために平然とウソの内容を学会発表する場合もあります。それも報道発表までしたりするので、患者さんからも聞かれ、困ってしまいます。

以前のブログにも書きましたが、証拠なしに「でっち上げです」という訳にもいきません。
もちろん不妊治療に限らず、患者の不安な心理に付け込むインチキ療法の例は、枚挙に暇がありません。

『詐欺とペテンの大百科』には、アルバート・エイブラムスという医師による、すばらしい警句が紹介されています。
-良心に支配されない偽医者は、自分が何でも知っているふりをしているのを知ることが許されている。
そして、ペテンを生む豊かな心理的土壌があるがゆえに、真実は虚偽に打ち勝つことはできない。

ちなみに、エイブラムスは、次々と新しい診断、治療機器を発明した著名な医師でしたが、亡くなる前年に全てデタラメだったことが暴かれました。

やはり、これくらい神経が太くないと詐欺師にはなれないのでしょうか。