甲状腺と不妊と二枚舌

甲状腺と不妊と二枚舌

理事長の中村嘉孝です。

New England Journal of Medicineの今週号(2019年7月11日)に、甲状腺検査と妊娠前の治療についての記事が載っていました。

抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(自己抗体の一種)が少し高いけど、甲状腺ホルモン(T3,T4)の値は正常。甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、3.2。妊活中だけれど、甲状腺ホルモン投与の治療を勧めますか?

こんな症例問題に、二人の専門家が、勧める、勧めないという真っ向から反対の立場で論説を書いています。

「絨毛からhCGが分泌されるようになれば、甲状腺ホルモン分泌を刺激してTSHが低下するから必要ない」とか、「いや、自己抗体が陽性の場合は40%でhCGに対する甲状腺の反応異常がみられる」とか専門的な討論がなされているのですが、細かい話はさておき、現在の学会の流れでは「不妊治療ではTSHが2.5以上だと治療すべき」というのが、スタンダードになりつつあります。

統計的に2.5以上だと流産率が高くなるから、というのが根拠ですが。一方で、そうすると大多数の方が対象になってしまいます。妊娠糖尿病などもそうですが、最近は全てに診断基準が厳しくなり、個人的には過剰な印象があります。

確かに甲状腺ホルモンの少量投与はたいした副作用もありませんので、飲んでおいて損はありません。でも、必要性について詰めて質問されると、とても困ってしまいますね。

「飲んでおいた方がいいでしょうか?」と聞かれると、「はい、飲んでおきましょう」という返事になり、

「飲まなくちゃいけないんですか?」と聞かれたら、「いや、飲む必要はないですよ」という返事になってしまいます。

「一体、どっちなの!?」と怒られると思うのですが、実際、そういうことなのです。

ところで、New England Journal of Medicineの同じ号に” ’Double Tongue’ Appearance in Ludwig’s Angina” という記事があり、感染症で舌が腫れて、一見、舌が2枚あるように見える写真が載っていました。

二枚舌にならないよう、現在、不妊、不育における甲状腺検査について当院独自の基準を設定すべく、検討しているところです。