着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その1

着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その1

医局カンファレンスです。

妊娠の現場である子宮内膜は、胚の着床が成立すると特殊な形の変化をおこして(脱落膜化)、胎盤の一部になります。一方で、妊娠が成り立たなかった周期では月経として剥がれていきます。

一般的にはそれほど知られていませんが、子宮内膜には多種多様な「白血球」が存在します。

白血球というと血液の中を循環して、細菌・ウイルス・癌など体の中の異物を監視・攻撃する細胞というイメージをもたれる方が多いと思います。
しかし実際には循環血の中の白血球は、ヒトの体の中のすべての白血球のごく一部 (5%未満と考えられています) です。白血球のほとんどは、血液以外のあらゆる臓器に分布しています。また、免疫反応以外の生理的な体の機能にも深く関わっていることが明らかになってきています。

興味深いことに、子宮内膜の白血球の数は、排卵後に急激に増えます。
そして、胚着床が起こる時期には夥しい数の白血球が見られます。着床が成立すると、その数は胎盤が完成する時期までさらに増加していきます。月経が起これば他の細胞とともにはがれていってしまいます。そしてまた次の排卵後には増えていく。

これを繰り返します (Journal of Reproductive Immunology, 2007:76(1-2):45-53) 。

このことから胚着床には一定の“炎症反応”が必要と考えられており、研究者によって盛んに調べられてきましたが、妊娠に最適な炎症がどのようなものか?については、まだ分かっていません。
正常な子宮内膜にはナチュラルキラー細胞を筆頭にいろんな種類のユニークな白血球が観察されますが、慢性子宮内膜炎に見られる形質細胞やBリンパ球は、ほとんど全くといってよいほど見つかりません。
私自身これまでに、日付診をはじめとして何千という子宮内膜を観察してきましたが、これは間違いがありません。

すなわち、慢性子宮内膜炎は正常とは明らかに異なる炎症反応で不妊症との関連性に着目した理由です。