着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その5

着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その5

(「着床に必要な子宮内膜の炎症とは…その4」はこちらです。)

医局カンファレンスです。

胚盤胞は、分割・拡張にともなって、赤ちゃんになる細胞のグループ(内細胞塊)と胎盤になる細胞のグループ(栄養外胚葉)とに分かれていきます。

「胚が子宮内膜に対して正しい向きに着床する」ためには、胎盤になる部分が子宮内膜側に、赤ちゃんになる部分が子宮腔(子宮のスペース側)に配置される必要があります。

これを対置(apposition)と呼びます。
子宮内で胚盤胞が子宮内膜に対して正しく向かい合う現象で、胚の着床の第一段階です。
ちなみに、第二段階が接着、第三段階を侵入と3つのステップに分けて考えられています。

対置については、胚着床三段階の中で最も研究が遅れていますが、今回、イスラエルの研究グループより興味深い報告がありました。(Sela HY et al. Placenta 2013;34(3):222-30.)

CXCL10という炎症性蛋白が対置に関わる候補蛋白だというものです。
子宮内膜細胞で作られて、将来胎盤になる細胞や初期の胎盤細胞に働きかけて、これらの細胞の運動性が増すこと。

つまり、子宮内膜側に将来胎盤が配置されるよう調整役を担っていることが、明らかになりました。

CXCL10については、以前に別の目的で調べていたことがあって、増殖期(排卵前)に比べて分泌中期・後期(着床期)に子宮内膜含有量が大幅に増加する蛋白です。
またこの排卵後の子宮内膜でのCXCL10の増加にはプロゲステロン(黄体ホルモン)が大きく関わっていることが明らかになりました (Kitaya K et al. J Clin Endocrinol Metab. 2004;89(5):2470-6)。

このように、女性側にとって半分は異物である胚盤胞を受け入れるために、着床期子宮内膜では他の臓器では見られない、激しい地殻変動が起きていることが窺えます。