ESHRE2013・胚着床関連トピックス…その2

ESHRE2013・胚着床関連トピックス…その2

『反復着床不全・着床障害と習慣流産/不育症では、子宮内膜の胚への対応が正反対』

医局カンファレンスです。

「反復着床不全と習慣流産/不育症は、しばしば似た病態として取り扱われるが、両者の子宮内膜の胚への対応パターンは、実際にはまったく逆である。

反復着床不全では、子宮内膜は最良の胚だけしか受け入れられない状態であり、逆に習慣流産/不育症では、子宮内膜は生存の可能性の低い胚までも受け入れるが、結局後になってはがしてしまうのではないか。」
このような内容の講演がありました。

英・サウザンプトン大学マックロン教授らの自身のデータに基づく仮説ですが、斬新な面白い考え方です。

この講演では、もうひとつ興味深い動画のプレゼンがありました。

培養した子宮内膜細胞を引っかいた後その近くに胚を置いてあげると、引っかいた内膜細胞の方へ向かって胚が移動し、やがて内膜細胞に接着・浸潤していく様子が撮影されていました。

子宮内膜生検が胚の着床を助けるという当院のIFCEと一致します。

これまで有効な手立てが少なかった反復着床不全に対して、不育症に対する検査や治療が導入されてきましたが、抗リン脂質抗体症候群や栓友病と着床不全の間に因果関係は証明されておらず、アスピリンやプレドニゾロンを用いた免疫療法は妊娠成績の向上には貢献できていません。
(Boosma et al., Cochrane Database Syst Rev. 2012 Jun 13;6:CD005996.)
(Dentali F, et al., J Thromb Haemost. 2012;10: 2075-2085.),
(Steinvil A, et al., Thromb Haemost. 2012;108:1192-1197)。

これまでの知識や経験から、私自身も着床不全と習慣流産/不育症は別物と考えています。
着床不全・着床障害診療の進展にはこのように新しい捕らえ方・アプローチが重要だとあらためて感じます。