カルシウムイオノフォア

カルシウムイオノフォア

胚培養士の佐治です。

今日はカルシウムイオノフォアについて新しい作用が期待される論文を紹介させていただきます。

Treatment with Ca+ ionophore improves embryo development and outcome in cases with previous developmental problems: a prospective multicenter study.
Human Reproduction, Vol.30, No1 pp.97-102, 2015

この論文では顕微授精において、受精後の胚が胚盤胞にまで発育しない症例に対して、カルシウムイオノフォアを使用することで受精率や分割率、胚盤胞到達率の変化を比較しています。

カルシウムイオノフォアは細胞質内のカルシウム上昇を促進する作用があり、顕微授精後の卵子活性化を誘導すると考えられています。

受精に際して、精子が卵子の透明帯内部に侵入し、卵子の細胞膜に接着すると他の精子の侵入をブロックするとともに卵子活性化物質が放出されます。
この卵子活性化物質が卵子細胞質内の小胞体からのカルシウムの放出を促進し、放出されたカルシウムは細胞質内を波状に伝播します。一過性のカルシウム上昇はリズミカルに繰り返されてカルシウムオシレーションという現象を引き起こします。
カルシウムオシレーションの開始と同時に減数分裂が再開され、受精の完了へと向かいます。カルシウムは受精に際して卵子の活性化に重要な役割を担っています。

論文ではカルシウムイオノフォア使用周期と使用しないコントロール周期で比較すると、受精率に変化は見られなかったが、分割率や胚盤胞到達率が有意に上昇したという結果が得られています。
さらに着床率や出生率も上昇したといいます。この結果はカルシウムが受精段階での卵子活性化だけでなく、分割やその後の胚の発育にも重要な役割を担っていることを示唆しています。

当院でもなかなか胚盤胞まで発育せず、凍結が思うようにできない症例があります。
この論文はそういった症例にカルシウムイオノフォアを使用することで改善できる可能性があることを示しています。

従来、受精障害や重度の男性不妊の症例に対してカルシウムイオノフォアの使用を勧めさせていただいてきましたが、今後は胚盤胞到達率が低い症例に対しても積極的にカルシウムイオノフォアの使用をご提案したいと考えています。