
生命が親から子へ受け継がれるとき、DNAは完璧にコピーされるわけではありません。最新の研究によれば、1人の子どもが両親から受け継ぐゲノムには、平均して152か所の新たな突然変異が生じることが明らかになりました。
この発見は、ワシントン大学を中心とする研究チームによるもので、2025年5月にNature誌に掲載され、世界中で大きな話題を呼んでいます。
論文はこちら(外部リンク):https://www.nature.com/articles/s41586-025-08922-2
この研究では、アメリカ・ユタ州に住む、4世代・28人からなる大家系(pedigree)を対象に、高精度のゲノム解析が行われました。
彼らに自然に生じた新しい遺伝子変異(de novo変異)を詳細に調べ、それが父親由来か母親由来かを判定することで、変異の起源と発生頻度が明らかにされました
このように、多世代にわたり血縁関係が明確に追跡できる家系を分析した点が、これまでにない特徴です。
結果として、子どもに生じる新規変異の約80%が父親由来であることが明らかになりました。これは、男性の精子が一生涯にわたり何度も分裂を繰り返す中で、DNA複製時のエラーが蓄積しやすいことが原因とされています。
従来から、父親の年齢が高くなると変異数が増加するという報告もなされており、本研究ではその背景にある父性由来の変異の多さが、定量的に裏付けられる形となりました。
この発見は、基礎生物学的な意義にとどまらず、今後の遺伝子診断や出生前検査の在り方にも影響を与えると考えられます。
従来、親から子へのDNA継承は「そのままコピーされる」と見なされがちでしたが、実際には、平均152か所の“新しい変異”が自然発生しているという事実は、遺伝性疾患のリスク評価や診断アルゴリズムの見直しを促すものです。
私たちオーク会でも、着床前診断(PGT)や遺伝カウンセリングの現場で、日々ゲノムの解釈と向き合っています。
今回の研究は、「子どもが生まれるたびに新たな遺伝情報が生み出されている」という、進化と多様性の本質をあらためて示すものです。
医療現場でも、こうした知見を踏まえながら、より個別化された、正確な遺伝子診断・治療のあり方を今後も模索してまいります。
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