凍結の様子を動画で見たい場合は、「卵子凍結の原理」をぜひ見てください。
卵子凍結は繊細な手技
卵子を平衡液からガラス化液、そして液体窒素へ浸けて凍結されるまで、わずか8～14分程度。とても、緊張感のある工程です。卵子は一度に大量に凍結することができないので、１～3個ずつ行っていきます。
何度も練習を重ね、経験値の高い熟練した胚培養士が作業をしますが、卵子を移し替えるタイミング、液の濃度、温度、操作の速さ──
どれか一つがずれても、卵子の生存率に影響します。
そして、管理No.・患者さまの名前・卵子の情報、凍結の実施者などを細かく記録を残し、保管します。
安全を第一に作業を進め、「未来の命を預かっている」という気持ちで、一つひとつの卵子を大切に扱っています。
精子の凍結も！
これまで卵子の話をしてきましたが、これは精子も同様です。
がん治療前に精子を凍結することも、もちろん可能です。精子は、射精された精子もしくは精巣内から採取されたものを用います。専用のチューブやストローを用いて凍結保存します。
＜一般的な射出精子の凍結の手順＞
1.精液を採取
2.精液を等量の凍結保護物質と混ぜる
・凍結によるダメージを防ぐための液体
※事前に精子調整（洗浄・濃縮）する場合もあります
・精液中の不要な成分（精漿）や異物を取り除く
・元気な精子を選び出す
3.チューブなどに分注し、液体窒素で凍結。凍結タンクで保存。
凍結の助成事業もあります！
抗がん剤治療で卵子や精子に影響が出る場合、治療前に凍結保存することで、将来の妊娠を諦めることなく治療に専念することができます。自治体によっては、妊孕性温存療法の助成制度もありますので、住民票のある自治体で助成制度の有無を調べてみてください。
東京都の場合は「東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業」があり、オーク銀座レディースクリニックは指定医療機関になっています。
大阪府の場合は「大阪府がん患者等妊よう性温存治療費等助成事業」があり、オーク住吉産婦人科とオーク梅田レディースクリニックも指定医療機関になっています。
さて、さいごに。
胚培養士ミズイロでは、凍結タンクの外蓋を閉め、「いい子でね」と胚培養士がそっと手を置く場面があります。
「10年後……、それ以上か。いつか実を結ぶ日まで」と。
このお話に登場するのは、高校生です。
高校生カップルの女の子が卵子凍結に至るお話で、その様子を彼が見守ります。
「俺にとってのふつーは、
なんでも相談すること、なんでも言い合うこと。
今は、聞くこと、見守ることしかできないけど、
でも、将来きっと……」
と、顔を真っ赤にして彼女に伝えます。
将来、この凍結卵子で妊娠を目指す場合、卵子を融解して夫の精子を用いて顕微授精（ICSI）を行います。この高校生カップルの赤ちゃんかなぁ…、人生いろいろだしなぁと思って本を閉じました。
＜＜ミズイロと学ぶ！‒ 第7話 卵子はどのように凍結されるのか？―未来へのタイムカプセルを守る、胚培養士のしごと
第9話へ続く
【関連リンク】
ART ASRM Cell誌 COVID-19 DNA IFFS2025 IVF Nature誌 PGT-A X染色体 Y染色体 おかざき真里 がん オーク会 ゲノム ジネコ タイムラプス培養 ダウン症候群 プレコンセプションケア ミズイロ 不妊治療 不育症 体外受精 保険適用 個別化医療 副作用 医療法人オーク会 卵子凍結 培養士 妊娠 妊娠率 子宮内膜ポリープ 子宮内膜症 新生突然変異 染色体検査 染色体異常 流産 生殖医療 着床率 細径子宮鏡 胚培養士 遺伝カウンセリング 遺伝子 遺伝的多様性 遺伝的要因