受精着床学会に参加してきました

受精着床学会に参加してきました

8月28日と29日に名古屋で受精着床学会があり、私は勤務の都合で29日のみ参加しました。短時間でしたが、非常に示唆に富む講演を聴くことができました。その中でとくに面白かったのは、卵子の老化と染色体異常についての内容についての講演でした。マウスを用いた基礎系のデータでしたが、ヒトにも応用できる内容が豊富にありました。

卵子の中では、染色体を正しく分ける仕組みがうまく働かないことがあります。これを「分配エラー」と呼びますが、これが起こると不妊や流産、先天性疾患の原因になります。
母体年齢が35歳を過ぎると、このエラーの頻度は急激に上昇することが知られています。卵子には、細胞の中で染色体を並べる「中心体」が存在しません。そのため、染色体を分けるための仕組みが不安定になり、エラーにつながりやすいのです。

さらに年齢を重ねると、染色体をしっかり結びつけておく仕組みが弱まり、早い段階でばらけやすくなります。このため、年齢依存的に分配エラーが増えていくのです。

染色体の大きさによってもエラーの起こりやすさが異なり、特に小さい染色体で異常が多いことがわかっています。代表例が21番染色体で、ダウン症との関連があります。

つまり、

  1. 卵子にはもともと構造的な弱点がある
  2. 年齢を重ねることでその弱点が強調され、染色体異常が増える
  3. 特に小さな染色体は影響を受けやすい

ということになります。

今回の学会で改めて感じたのは、基礎研究の知見が臨床と直結しているということです。卵子の老化は避けられない現象ですが、その理解が深まることで、妊娠・出産に向けた選択肢やサポートの幅は確実に広がっていくはずです。

ちなみに、染色体エラーが起こる状態を回避すべく物理的に工夫する余地はありますので、ヒトへの臨床応用には時間がかかりそうではありますが、加齢による卵子の老化(染色体に関する)が、解決される日が来るかもしれません。


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