Oak Journal Review:体外受精の1個移植は、良好な分娩結果につながる

Oak Journal Review:体外受精の1個移植は、良好な分娩結果につながる

こんにちは。検査部の鈴木です。

今回の動画では、5月10日に開催いたしましたOak Journal and Case Reviewより、私が紹介したOak Journal Reviewの内容をお届けします。

紹介した論文は、
Elective transfer of one embryo is associated with a higher cumulative live birth rate and improved perinatal outcomes compared to the transfer of two embryos with in vitro fertilization.
Mejia RB, Capper EA, Summers KM, Ten Eyck P, Van Voorhis BJ. F&S Reports 2021;2(1):50–7.
です。

これまでの研究で、1個の胚を子宮に移植するより2個の胚を移植したほうが、移植あたりでの妊娠率が高い事が知られています。そのため患者様にとって2個移植をする事で早く妊娠できるメリットがあります。しかし、複数の胚を移植すると双子など多児妊娠の可能性が高くなります。
多児妊娠をすると、悪阻(つわり)や早産などさまざまなリスクがあります。そのため、日本では日本産科婦人科学会から体外受精により双子など多児妊娠を防ぐためのガイドライン(1)が出ており、患者様の年齢にはよりますが基本的に胚を1個だけ移植しています。
このように日本で早く妊娠できる2個移植を抑制しているのは、多児妊娠を防ぐためとは言っても患者様に不利益を与えているのでしょうか?

体外受精の結果を示す指標にはいろいろあり、先に述べた移植あたりの妊娠率もその一つです。ただ体外受精の最終的な指標は妊娠したかではなく、けっきょく最終的にお子さんが誕生したかという累積生産率(2)です。
今回紹介した論文では、移植あたりの妊娠率では2個移植には負けるとしても、1個移植には多児妊娠を防ぐ事のメリットの他、累積生産率では意外にも2個移植よりも高くなることを示しています。
移植あたりの妊娠率では2個移植に劣る1個移植は、なぜ累積生産率では逆転できるのでしょうか?デメリットはないのでしょうか? この研究の詳細は、こちらの動画でご確認ください。

参照
1. 多胎妊娠防止のための移植胚数ガイドライン(日本産科婦人科学会)
http://www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2007_01.html

2. 累積生産率
ここでの生産は、死産の対義語で、元気に赤ちゃんが誕生との意味です。
累積生産率は、1回の採卵とそれに関連する移植で最終的に生産に至る割合の事です。