禁欲期間が長いと精子DNAが損傷する

胚培養士の奥平裕一です。

前回のブログでは、男性の加齢とともに精子のDNA損傷と酸化ストレスが増加することをお伝えしましたが、引き続き今回も精子のDNA損傷に関する論文をご紹介します。

Sperm DNA fragmentation is correlated with poor embryo development, lower implantation rate, and higher miscarriage rate in reproductive cycles of non-male factor infertility.
Fertility and Sterility. 2019 Sep;112(3):483-490. doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.04.029.

対象・方法
2016年から2017年にICSIを行った475周期を対象にした前向きコホート研究です。なお、対象患者の不妊原因は女性因子であることが示されています。精子DNA断片化率(SDF)が30%未満(n = 433)と30%以上(n = 42)の2つのグループに分け、精液所見、培養成績と臨床転帰を比較しています。

結果
平均SDFは、SDFが30%未満グループで17.48%であり、30%以上グループで37.67%でした。
SDFが30%以上のグループでは、男性の年齢が高く、禁欲期間が長く、精液量が多く、総精子数が多いが、運動率および前進運動率は低かったです。

そして、SDFが30%以上のグループでは、正常な分割速度の胚の割合、培養3日目の良好胚率、胚盤胞率、良好胚盤胞率、着床率が低かったです。また、妊娠率に差はみられませんでしたが、SDFが30%以上のグループでは高い流産率を示しました。

解説
精子のDNA損傷の割合が高いと、胚発育が不良になり、着床率が低下し、さらに流産率が高まることが示されました。前回の論文と同様に男性の年齢が高いと精子のDNA損傷の割合が高かったのですが、長い禁欲期間も精子のDNAに損傷を与える結果となりました。よって、治療の為に射精を控えるのではなく、周期中は採卵日に向けてこまめに射精した方が精子の質にとって良いと思われます。また、精子のDNA損傷には酸化ストレスが関連していますので、酸化ストレスが生じる要因(喫煙、深酒、肥満、激しい運動など)を避けることが望ましいです。