着床不全について 

着床不全について 

医局カンファレンスです。

昨年発表されていた、着床不全についてまとめたものをご紹介します。

着床不全となる 1.リスクファクター 2.メカニズムと治療方法 について数回に分けてまとめていきたいと思います。
(Reprod Biology and Endocrinology 2018)

まず着床不全の定義としては、良好胚を移植しているにもかかわらず、3回以上着床しないことと定義しているのが一般的です。また、化学流産も着床不全のカテゴリーに含まれます。

リスクファクター

【その①ー女性の年齢】

女性の年齢は体外受精において、受精卵の質において極めて重大なものです。年齢上昇とともに受精卵の染色体異常のリスクは高まります。また、39歳頃より化学流産が明らかに多くなってきます。分娩率も母体年齢と受精卵の質の両方と関わってきます。それは、女性の年齢が上昇するにしたがって、受精卵と子宮内膜の同期性が失われてくることがあるようです。特に新鮮胚移植ではこのような傾向が出てきます。
着床率は35歳未満で新鮮胚移植時が41.3%、融解胚移植時が47.1%とあまり変わらないのに対し、44歳以上ではそれぞれ1.9%、16.2%と約8倍融解胚移植の方がよい結果となっていました。しかし提供卵子を使う場合はすべての年齢において着床率は新鮮胚移植で53.6%、融解胚移植で40.2%となっていました。

【その②-BMI】

BMIが25以上になると着床に影響があると言われています。
IVFでは、クラスⅠ(BMI30~35)、クラスⅡ(BMI35~40)、クラスⅢ(BMI40~45)でBMIが18から25の人と比べてオッズ比がそれぞれ0.69、0.52、0.58と着床率が低いことが言われています。また、BMI40以上の人は流産率が高いこともわかっています。さらに、BMIが25以上の人では採卵数の減少も指摘されており、肥満が卵胞発育にも影響していることが言えます。

【その③-喫煙】

不妊治療において、喫煙女性は喫煙しない女性に比べて流産率が有意に上昇することがわかっています。また体外受精では、喫煙女性は卵巣刺激中のエストロゲンが低く、たばこの有害物質が黄体形成や胚の着床を阻害していることが言われています。そのため、喫煙が生産率を低下させ、妊娠に対して悪い影響を与えていることは明白です。また男性においても喫煙によって、精子数、運動精子数、正常形態率の有意な低下がわかっています。

【その④-ストレス】

ストレスホルモンといわれているのが、コルチゾ-ルです。このホルモンが高いと、受精後約3週間以内に流産する確率が2.7倍上昇すると言われています。コルチゾールは精神的、免疫学的そして他のストレスに反応して上昇するようです。
初回体外受精後に不安や気分の落ち込みを感じている人のほうが、有意に妊娠率が低かったという報告もあります。ただ、このホルモンと反復着床不全との因果関係までははっきりしていません。