血液型と体外受精における妊娠

血液型と体外受精における妊娠

医局カンファレンスです。

血液型と体外受精における妊娠に関係はあるのかという論文がアメリカから出ていたので紹介します。
(Fertility and Sterility vol.108,No8,Nov 2017,p791-797)

2004年から2014年までに初回体外受精で5日目まで培養し、胚盤胞移殖(1つ)を行った患者で、40歳未満、FSH12以下、AMH1以上の条件、さらにPCOS、2個移植、PGSした胚の移植の患者を除外しました。2,329名対象に検討しました。

A型897人(38.5%)、B型397人(17%)、AB型120人(5.2%)、O型915人(39.3%)でアメリカにおけるそれぞれの割合とほぼ一致していました。
それぞれにおいて年齢、人種、BMI、不妊原因、FSH値、AMH値、AFCに有意差はありませんでした。
また、妊娠と非妊娠患者において比較しましたが、どれも有意差は認められませんでした。
出生体重や早産、正期産の比較でも有意な差はありませんでした。唯一、有意差が出たのが年齢で、全体として非妊娠患者のほうが有意に高い結果でした。(妊娠34.7±4.81歳、非妊娠35.1±4.77歳 p=0.04)

(補足)
血液型は赤血球の表層に発現している抗原の特徴によって分けられています。
最近ではいくつかの病気においてリスクが高くなる原因に関係しているのではないかとも言われています。
特に、婦人科疾患との関係が報告されており、子宮内膜症、卵巣がん、OHSS、不妊症との関連が言われています。

その中では、O型と卵巣機能低下の関係があるというものや中国人はB型と卵巣機能低下が関係あるのではというものもあります。しかし反対に、血液型と卵巣機能に関係はないといった論文もあります。
O型と卵巣機能低下の関係については、卵胞発育(FSH及びLHレセプター)に必要な糖化という現象があるのですが、糖化に必要な酵素がO型の対立遺伝子によって誘導されており、O型はその対立遺伝子がないため卵巣機能低下になるのではと言われています。

また、免疫反応や炎症反応が血液型によって違うことによって、着床や胚の成長に影響をおよぼしている可能性も指摘されています。
今回の論文は、初回体外受精妊娠率に差がでるのかということを分析しており、血液型で差はなかったと結論づけています。
しかし、今回の結論が断言できるには、もう少し症例数を集めて検討することが必要と締めくくっています。

血液型と不妊の関連についてはまだまだはっきりしていないことが多いです。
いままで血液型といえば占い!と思っていただけに、今後も色々と解明されていく可能性があるのではと思うと楽しみです。