肥満と子宮筋腫

肥満と子宮筋腫

医師の船曳美也子です。

Uterine fibroids and cardiovascular risk Outi Uimari Finland Human Reproduction,pp.1-15,2016

This study reports an association between increased serum lipids, metabolic syndrome with an increased risk of uterine fibroids.

これは1966年に北フィンランドで出産された女児5889名が48歳になった時点でどんな健康状態になっていたかの統計です。この論文では、子宮筋腫の方は、内蔵型肥満や高脂血症と相関が高かった、すなわち、肥満が子宮筋腫のリスクファクターである、としています。

子宮筋腫のある方は、すぐダイエット!と思われるかもしれません。
しかし、こういった自己申告の統計は、慎重にみるべきです。
統計結果というのは、条件で全く異なる答えがでることがあるからです。
たとえば肥満の場合、生活習慣病で病院を受診する機会が非肥満にくらべ多いはずなので、子宮筋腫自体がみつかりやすい環境にあるかもしれません。
肥満も子宮筋腫も同じくらい高い割合で存在するなら、対象者はダブる可能性があります。

このように、統計からの結果は慎重にみるべきと思っていますが、今回注目したのは、そのメカニズムです。内臓脂肪細胞が増大する→インスリン抵抗性があがる→高インスリン血症→インスリン様成長因子 ( IGF-1, insulin-like growth factors )が肝臓で合成され活動が高まる。→オートクライン・パラクラインに繊維腫の増大を促すかもしれない、とのこと。

これは、インスリン抵抗性が高いマウスで女性ホルモン・黄体ホルモンを子宮平滑筋の増殖が進んだという実験や、子宮筋腫の発生に関与する染色体領域が、IGF-1やIGFBP-3の候補と関係しているという報告から考察されています。つまり、高脂血症が、子宮平滑筋や血管内皮細胞の両者に同時に悪影響を及ぼすのではないか、ということです。

筋腫の方には、脂肪食を減らして、(また同時に食物繊維を多くとる)という食習慣をつけていただくことは、少なくとも悪い影響はないといえるでしょう。