乳がん好発遺伝子と早発閉経リスクの関係

乳がん好発遺伝子と早発閉経リスクの関係

医師の船曳美也子です。

BRCA1 germline mutations may be associated with reduced ovarian reserve Erica T.Wang,M.D. L.A

乳がんの5~10%は遺伝で、BRCA1/BRCA2遺伝子の変異が関係しているといわれています。BRCA1遺伝子の変異の方は乳がん・卵巣がんになりやすいことが知られており、女優アンジェリーナ・ジョリーさんが予防的乳房切除をしたことで話題になりました。

今回は、BRCA1遺伝子変異が卵巣予備力低下(すなわち早発閉経のリスク)と関係しているかもしれない、という論文です。

細胞内のDNAはつねに損傷と修復をくりかえしています。DNA修復がDNA損傷に追いつかなくなると、細胞は、①細胞老化 ②アポトーシス(細胞死) ③癌化のいずれかの運命をたどります。

BRCA1という遺伝子は、double-standard DNA breaks (DSDB) という二重鎖DNAが切断されたものを修復する時に必須です。ですから、BRCA1遺伝子に変異があると、ガンがおこりやすくなるわけですが、同時に、卵巣ではアポトーシスが進む、つまり、原始卵胞の減少が進む、ということです。

1991年から2008年までに782名がBRCAテストをうけ、そのうち、143名を分析しました。
年齢やBMIでの補正をしたデータ結果より、BRCA1遺伝子変異の方は、AMHの値が0.52ng/mL少なく、AMH<1の確率が4倍高かったという結果でした。BRCA2遺伝子変異はコントロールと変わりませんでした。

今後遺伝子診断が普及した際には、BRCA1変異遺伝子の方は、卵子凍結や早くに出産をとすすめられるかもしれません。