「胚盤胞の形態学的評価」と「胚盤胞の染色体検査結果」と妊娠率の関係

「胚盤胞の形態学的評価」と「胚盤胞の染色体検査結果」と妊娠率の関係

医師の船曳美也子です。

Correlation between standard blastocyst morphology, euploidy and implantation: an observational study in two centers involving 956 screened blastocysts Antonio Capalbo Roma,Italy Hum.Reprod.(2014)29(6):1173-1181

イタリアのバチカンはカトリックの総本山。イタリアで、宗教的理由より(受精卵を人間と考えるため)受精卵の凍結が禁じられたのが2004年。

受精卵凍結ができないことがきっかけで、卵子凍結の実施がふえました。
その結果、卵子凍結の安全性が確認され、実験的治療というラベルがはずされました。
同様に、イタリアで、受精卵を人間と考えるため、形態的に不良な受精卵にも染色体検査が行われ、その結果、受精卵の形態学的評価が低くても、染色体が正常な受精卵がかなりあることがわかっています。

今回は、胚盤胞の形態での判定と、aCCS(着床前全染色体診断)との相関をみて、実際aCCSで染色体正常と判断された凍結胚盤胞だけを胚移植したときの継続妊娠率(20週で心拍陽性)をしらべました。

染色体検査で正常核型だったのは、胚盤胞の形態学的評価で3AA以上のグループの56.4%をしめましたが、3BB以下のグループだと25.5%でした。

実際、正常核型の胚のみ移植したときの継続妊娠率は、3AA以上のグループは49.1%、3BB以下のグループは53.8%、でかわりませんでした。

また、拡張胚盤胞になったのが、D5でもD6でもその正常核型率は46.6%、39.8%と有意な変化はなく、正常核型胚を移植すると、D5でもD6でも継続妊娠率は、48.8%、51.2%とかわりませんでした。

今回の論文をまとめると以下のようになります。

胚盤胞に到達するのが遅くても正常核型の率は有意にはかわらない。

正常核型の可能性と、胚盤胞の形態に相関はあるが、正常核型であれば、胚盤胞の形態により継続妊娠率はかわらない。

正常核型胚を凍結周期移植したら以下の適応者の場合、約50%の継続妊娠率であること。

今回aCCSが適応されたのは、36歳以上の高齢者、2回以上IVF不成功者、2回以上流産既往です。