不妊治療の交通費8割補助――それで十分と言えるのでしょうか

不妊治療の交通費8割補助――それで十分と言えるのでしょうか

2026年4月から、こども家庭庁は、不妊治療に通院する際の交通費を最大8割補助する制度を始めると発表しました。

自宅から最寄りの不妊治療クリニックまで片道1時間以上かかる場合、鉄道やバス、タクシーなどの公共交通機関に加え、自家用車で通院した際のガソリン代も対象になります。助成回数は最大10回までとされています。地方に住む方や、遠方の医療機関に通わざるを得ない方に配慮した制度であることは、確かに評価できる点だと思います。


ただ、不妊治療の現場を見ていると、少し気になる点もあります。経済的な負担として大きいのは、交通費そのものよりも、保険適用下での不妊治療の回数制限ではないでしょうか。

年齢制限については、治療効果や医療費の持続可能性といった観点から、一定の説明が成り立つ部分もあります。一方で、回数制限については、「あと数回続けられれば結果につながるかもしれない」という段階で治療を終えざるを得ないケースも少なくありません。そのような状況を考えると、交通費補助だけで十分な支援と言えるのか、疑問が残ります。

今回の交通費補助は、限られた予算の中でできる対策として打ち出されたのかもしれません。ただ、「治療そのもの」への支援が大きく広がらなかったことについては、財務省との調整の難しさを感じさせる面もあります。結果として、比較的実施しやすい交通費補助にとどまったのであれば、少し残念に感じる方も多いのではないでしょうか。

一方で、東京都では、2026年度から不妊治療に関する費用助成をさらに拡大する方針が示されています。国の制度を補完する形で、自治体が独自に支援を広げていく動きは、心強いものがあります。

大阪については、通院にかかる交通費、特に地下鉄代の負担が大きいと感じている方も少なくありません。国の交通費補助だけにとどまるのか、それとも独自の支援策が打ち出されるのか、吉村洋文知事の判断が注目されます。

今後、不妊治療を取り巻く医療技術や提供体制は、少しずつ変わっていくと考えられています。通院の頻度や治療の進め方そのものが変化すれば、「遠距離通院」を前提とした支援のあり方も、再検討が必要になるかもしれません。

だからこそ、目先の負担軽減だけでなく、治療を続けやすい制度全体の設計が、これからますます重要になるように思います。

交通費の8割補助は、決して意味のない施策ではありません。ただ、それだけで不妊治療の負担が十分に軽くなるわけでもないのが現実です。

子どもを望む人が、住んでいる場所や経済状況に左右されすぎることなく治療を受けられるように ーそのために、今後どのような制度が必要なのか、引き続き考えていきたいと思います。


ART ASRM Cell誌 COVID-19 DNA IFFS2025 IVF Nature誌 PGT-A X染色体 Y染色体 おかざき真里 がん オーク会 ゲノム ジネコ タイムラプス培養 ダウン症候群 プレコンセプションケア ミズイロ 不妊治療 体外受精 保険適用 個別化医療 副作用 医療法人オーク会 卵子凍結 培養士 妊娠 妊娠率 子宮内膜ポリープ 子宮内膜症 新生突然変異 染色体 染色体検査 染色体異常 流産 生殖医療 着床率 細径子宮鏡 胚培養士 遺伝カウンセリング 遺伝子 遺伝的多様性 遺伝的要因