
融解後、胚はどうなる?ー小さくしぼんだあと、ふっくら元気に
融解された胚は、一度しぼんだ状態になることがあります。凍結時に浸透させた液が細胞内に残っているためで、元の形に戻る前の自然な変化です。
その後、耐凍剤の除去/水の流入により再び膨らみ、「再拡張」します。培養士は、この過程で胚の細胞がどれだけ元気に回復しているかを慎重に観察します。
胚盤胞の場合、融解直後はややしぼんでいても、時間とともに膨らみ、内部の細胞がきれいに見える状態であれば移植に適した状態と判断されます。
さらに、ガードナー(Gardner)分類を用いて評価します。発育段階(ステージ)、内部細胞塊(ICM:将来赤ちゃんになる部分)、栄養外胚葉(TE:将来胎盤になる部分)をチェックします。
例えば「3BC」という表記は以下の意味です。
数字やアルファベットで評価されますが、グレードだけで全ては決まりません。それぞれの胚が着床に向けて準備しています。では、具体的な表記を見てみましょう。

1. ステージ(胚盤胞腔の大きさ)
数字で表され、今回の「3」は「完全胚盤胞」といい、胚盤胞腔が全体に広がった状態を示します。
2. ICM(内部細胞塊)の状態
将来赤ちゃんになる部分で、アルファベットで評価されます。「B」は、細胞がやや少ない状態を意味します。
3. TE(栄養外胚葉)の状態
将来胎盤になる部分で、こちらもアルファベットで評価されます。「C」は細胞が非常に少ない状態です。
数字が大きく、ICMとTEがAに近いほどグレードが良く、妊娠率も高いとされますが、グレードだけで全ては決まりません。胚は一つひとつ個性があり、回復スピードや様子も異なりますが、それぞれ着床に向けて準備しています。

融解後の胚の個性 ー回復のスピードは様々
胚は、一つひとつ回復のスピードや様子が異なります。ある胚はすぐにふっくら膨らみ、内部の細胞も整った状態になりますが、時間をかけてゆっくり回復する胚もあります。このばらつきは胚自身の個性であり、どの胚も着床に向けて少しずつ準備をしています。
培養士は、この微妙な違いを見逃さず、細胞の質感や色、膨らみ具合を細かく観察します。回復がゆっくりでも最終的に元気な状態になる胚も多く、数字やグレードだけでは測れない生命力がそこにあります。

融解で大切なことー安全に回復させる、胚培養士の光る技術
胚の融解は数分ほどで行われます。−196℃の液体窒素から37℃の培養液へ移す「急速融解」によって、氷晶の形成から胚を守り、胚内の凍結保護剤を段階的に希釈・排出することで、細胞が膨らみすぎず安全に回復できます。
胚の融解の際には以下のポイントが重要になります。
● 温度管理と時間の厳守:数秒単位で操作し、胚への負担を最小限に
● 手技の安定性と手順の標準化:スタッフ全員で同じ方法を共有
● 取り違え防止のダブルチェック:ご夫婦の胚を間違えない
● 回復後の観察:細胞の質感、色、膨らみ具合を確認し、グレードを評価する
熟練した培養士が正確に手順を踏むことで、胚の生存率と発育を守りながら、着床に向けた準備が行われています。
−196℃から37℃へー温度差233℃を経験する胚
凍結胚は、−196℃の世界から37℃のお風呂に浸かるような経験を凍結・融解の際に経験します。私たちが一生の間に経験できない233℃もの温度差にさらされる胚を守るため、胚培養士には高い技術と知識や管理が欠かせません。
胚ひとつひとつの力を信じ、慎重に扱うことで、安全で妊娠の可能性が広がる移植へとつながるのです。
凍結された胚は液体窒素(−196℃)が充満する凍結タンクの中で保存されています。
この環境では細胞の活動はほぼ停止しており、時間の経過による変化はほとんど起こらないと考えられています。
オーク会では、超急速ガラス化保存法を用いて胚を凍結しているため、融解後の生存率は高く、安全に移植できるのが特徴です。
また、胚を凍結しておくことで、カップルは自分たちのスケジュールや体の状態に合わせて、移植のタイミングを選ぶことができます。
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次回へ続く
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