ヒトの寿命はどこまで遺伝で決まるのか

ヒトの寿命はどこまで遺伝で決まるのか

―― Science誌に掲載された最新研究から ――

2026年1月29日、世界でもっとも権威ある科学誌の一つである Science に、たいへん興味深い研究論文が掲載されました。ワイツマン科学研究所の Ben Shenhar 氏と Uri Alon 教授らによる研究で、ヒトの寿命における「遺伝の影響」を改めて見直す内容です。論文タイトルは論文タイトルは

「Heritability of intrinsic human life span is about 50% when confounding factors are addressed」
(交絡因子を排除した場合、ヒトの内因性寿命の遺伝率は約50%である)

論文はこちら>>

これまで私たちは、寿命は主として生活習慣や社会環境によって左右され、遺伝の影響はそれほど大きくないと考えてきました。双子研究などからも、寿命の遺伝率は2割前後、場合によっては一桁台とされることが多く、この理解は長らく定説となっていました。

ところが今回の研究は、こうした従来の推定には見過ごされてきた問題があることを指摘します。それは、寿命を論じる際に、死亡原因の違いが十分に区別されてこなかった点です。事故や感染症など、外的な要因による死亡と、老化そのものに由来する死亡とを同列に扱ってきたことが、遺伝率を過小評価してきた可能性があるというのです。

研究チームはこの点に着目し、過去の膨大な人口統計データに対して、新たな数学モデルを適用しました。そのモデルでは、死亡を「内因性」、つまり体内の老化プロセスに基づくものと、「外因性」、すなわち事故や社会環境に左右されやすいものとに統計的に分離します。こうして外因性の影響を取り除くことで、より純粋に「老化としての寿命」に対する遺伝の寄与を評価することが可能になりました。

その結果は、多くの研究者にとっても驚くべきものでした。内因性寿命に限って見た場合、その遺伝率はおよそ50%に達するというのです。これは従来の推定値の2倍以上であり、寿命が身長や体格といった代表的な遺伝形質と同程度に、強く遺伝の影響を受けていることを意味します。まさに、ヒト寿命の遺伝率に関するパラダイムシフトと呼ぶにふさわしい結果だと思います。

もっとも、この研究は「遺伝ですべてが決まる」と言っているわけではありません。遺伝が寿命の土台に大きく関わっていることが示された一方で、残りの半分には、生活習慣や環境、社会的条件、そして偶然が関与していると考えられます。遺伝が設計図だとすれば、私たちの日々の選択や生き方は、その設計図の上にどのような人生を描くかを決めている、と言えるのかもしれません。

寿命や老化をめぐる研究は、近年大きな転換期を迎えています。今回の論文は、努力か遺伝かという単純な二項対立を超えて、より現実的で奥行きのある人間観を私たちに提示してくれているように感じます。遺伝を知り、その上でどう生きるかを考える -そんな視点の大切さを、改めて教えてくれる研究ではないでしょうか。


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