ヒトの卵子が若返る可能性がある

ヒトの卵子が若返る可能性がある

新年早々、「ヒトの卵子が若返る可能性がある」という、にわかには信じがたい研究が英ガーディアン紙で報道されました。内容が事実であれば、生殖医療の歴史を塗り替える可能性を持つ、まさに“革命的”な話です。

https://www.theguardian.com/science/2026/jan/09/human-eggs-rejuvenated-in-advance-that-could-boost-ivf-success-rates

この研究は現在、査読前論文(プレプリント)としてbioRxivに公開されており、近日中に英国生殖学会で発表される予定とされています。今後、Natureなどの一流誌で厳密な査読を経て掲載されるかどうかが、評価の大きな分かれ目になるでしょう。

https://www.biorxiv.org/content/10.64898/2026.01.08.698387v1

研究の核心は、卵子の老化の原因に真正面から切り込んだ点にあります。女性の卵子は、生まれる前から卵巣内で何十年も待機し続けます。その間に、染色体同士を結びつけておく仕組みが徐々に弱まり、分裂の際に染色体がばらばらになりやすくなります。これが、高齢になるほど流産や染色体異常が増える大きな原因です。

今回注目されたのが、SGO1(シュゴシン1)と呼ばれるタンパク質です。これは染色体の結合を守る「守護役」のような存在ですが、加齢した卵子ではこのSGO1が著しく減少していることが分かりました。研究チームは、「足りないなら補えばよい」という極めてシンプルな発想に基づき、SGO1を作るためのmRNAを高齢女性由来の卵子に微量注入しました。

その結果、染色体が早く離れてしまうエラーの発生率が、治療をしなかった卵子に比べて約半分にまで減少しました。40代の卵子であっても、染色体の安定性が大きく改善したのです。この結果は、卵子の老化が「取り返しのつかない損傷」ではなく、「修復可能な分子レベルの異常」である可能性を示唆しています。

もちろん、これはまだ査読前の段階であり、すぐに臨床応用できる話ではありません。しかし、責任著者はヒト卵子の減数分裂研究における世界的権威であり、これまでにもScienceやNatureなどの超一流誌に同分野の論文を多数発表してきた研究者です。その点を考えると、単なる話題先行の研究とは言い切れません。

もし今後、追試や大規模研究でこの結果が確認されれば、IVFの成功率向上だけでなく、PGT-Aをはじめとする出生前遺伝学的検査の位置づけや、不妊治療全体の戦略そのものが大きく変わる可能性があります。「良い卵子を選ぶ医療」から、「卵子を修復する医療」へ -その転換点になるかもしれません。

これまで「卵子の若返り」をうたう研究は数多くありましたが、今回の報告は分子機構と実験結果の両面から見て、久しぶりに本気で期待してよい内容に見えます。今後の検証と続報を、冷静に、しかし前向きに見守りたいところです。


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