
2024年11月24日、医学誌JAMAに、GLP-1受容体作動薬(オゼンピック、ウゴービなど)を妊娠前や妊娠初期に中止した女性の妊娠経過を検討した重要な論文が掲載されました。肥満症治療の中心となりつつあるGLP-1薬ですが、妊娠中の安全性データが十分でないため、多くの女性が妊娠希望時や妊娠判明時に中止を余儀なくされます。今回の研究は、この「中止後に起こる体重変化」が妊娠にどのような影響を及ぼすかを大規模データで分析したものです。
研究は、米国Mass General Brighamの電子カルテを用いた観察研究で、妊娠前90日以内にGLP-1薬を使用し、その後中止した女性を対象とし、年齢やBMIなど背景が同等の女性と比較しました。その結果、GLP-1薬を中止した女性は、妊娠中の体重増加が平均3kg以上多く、医学的に推奨される範囲を超えて体重が増えた割合も高くなっていました。中止後の限られた期間に急激な体重リバウンドが起こることが、妊娠経過に影響した可能性が示唆されます。
さらに、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、早産といった合併症が、GLP-1中止群で増加していました。胎児の出生体重や先天異常については大きな差は見られませんでしたが、母体側の合併症リスク上昇という点で臨床的な意味は大きいと考えられます。「中止すれば安全」という単純な理解では不十分であり、むしろ中止に伴って生じる代謝変化や急激な体重増加こそが、新たなリスクとして認識されるべきであることを示す結果です。
肥満改善は妊娠率や妊娠経過に大きく関わるため、GLP-1薬は妊娠希望の女性にとって有力な治療選択肢です。しかし今回の報告は、薬の使い方以上に「やめ方」の重要性を強調しています。妊娠を予定する女性では、GLP-1薬の中止をできる限り計画的に行い、中止後の食事・運動を含む体重管理を強化することが望ましいでしょう。
なお、マンジャロ(チルゼパチド)はGLP-1薬以上に強力な体重減少効果を持つため、中止後のリバウンドもより大きくなる可能性があります。今回と同じ研究手法でマンジャロ使用者のデータを検討すれば、同等かそれ以上に重要な臨床課題が明らかになるかもしれません。
医療法人オーク会としても、妊娠希望患者に対しては、GLP-1薬やマンジャロの適切な導入と中止のタイミング、そして中止後の体重変化の管理を重視し、最新のエビデンスを踏まえた安全な妊娠管理を行ってまいります。

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