
このたび、坂口志文先生(京都大学名誉教授)が、制御性T細胞(Treg)による免疫制御の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞されたことを、心よりお祝い申し上げます。
Treg細胞は、免疫の過剰反応を抑えて体内の調和を保つ働きを担い、自己免疫疾患や移植医療のみならず、妊娠の成立や維持における免疫寛容の理解にも重要な手がかりを与えています。
妊娠初期には、母体が半分「非自己」である胎児を受け入れるため、免疫系が精密なバランスを保つ必要があります。Treg細胞の機能異常は、反復着床不全や習慣流産、さらには子宮内膜症の発症・進展とも関係すると報告されています。当院でも、免疫バランスの一つの指標としてTh1/Th2比検査を行い、必要に応じて免疫調整療法(例:タクロリムス投与など)を併用することで、着床環境の改善を図っています。
また、当院の梅田院の北脇医師をはじめ、長年非常勤として協力いただいている沖村医師・高岡医師らが、当院症例も含めた研究を通じて、着床や子宮内膜症とTregの関係についての成果を発表されています。
特に、Treg機能障害が子宮内膜症を悪化させることを示した研究(※1)や、まだ、マウス段階ですが Treg の養子移植 により子宮内膜症様病変の進行を抑制できることを報告した最近の論文(※2)は、いずれも免疫と生殖の接点を解き明かす先駆的な成果です。
坂口先生のご業績は、こうした生殖免疫研究の基盤となる発見であり、私たちの臨床の現場にも直結するものです。
医療法人オーク会では、この受賞を励みに、免疫と生殖を結ぶ新たな臨床応用の探究を続け、科学的根拠に基づく安全で確かな医療を提供してまいります。
【論文情報】
※1:Tanaka et al., J Clin Endocrinol Metab. 2017;102(9):3206–3217, doi:10.1210/jc.2017-00052
※2:Maeda et al., Hum Reprod. 2025;40(5):926–937, doi:10.1093/humrep/deaf054
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